高校数学の復習

冒頭は放物線の定義としての、準線と焦点から等距離にある点の集合である。逆に、その放物線を定める準線と焦点は一通りなのかというような、2次曲線の一意性に関する疑問から入った下巻も、しっかりした書であることを窺わせる。最近、某大学の推薦入試の面接でも、そのような一意性に関する質問があったことを聞く。下巻は、7章のベクトル・行列と図形、8章の極限、9章の微分とその応用、10章の積分とその応用、11章の確率分布と統計からなる。空間図形では、検定教科書では扱わなくなった一般の平面や直線の方程式を扱うが、「なんで扱わなくなったのか」と不思議になるほど分かり易い説明である。極限では、「限りなく近づく」という言葉の説明が、「すべて」と「ある」を用いて誤解を生じないように書いてある点に工夫を感じる。微積分では、物理学で確か「フェルマーの定理」(整数のそれとは違う!)と呼ばれる光の屈折に関係する性質、微分方程式などに目を引くが、統計の正規分布の式に現れる円周率πの背景をウォリスの公式をしっかり証明しているフォローが、ひたむきさを感じる。また、自然対数の底eの導入を、最初から一歩ずつ述べている点に感心した。考えてみると、三角関数の微分の基礎となる性質は検定教科書できちんと記述しているものの、対数・指数の微分の基礎となるeの導入を省いている検定教科書の在り方は不自然、という著者の指摘はもっともである。その意識に著者の個性を感じる。また、展開と因数分解の違いから、積分の計算はたくさん行うとよい説明も納得する。統計では、相関係数や回帰直線で、阪神タイガースの優勝や男女の平均初婚年齢が出てきたり、正規分布でイチローの4割打者の確率や、将棋は後手有利になったことを窺わせる確率があったりするが、相関係数のところでシュワルツの不等式の証明、正規分布の導入にある確率変数の説明が、地味であるものの手を抜かずにしっかり記述している。最後の「検定と推定」の項の練習問題で、ワカサギの生息数の区間推定の問題があったが、上巻が”鮒釣り”を例えにした説明で始まったことを受けての終わり、と見たい。2010年4月17日号の週刊東洋経済で、元外務省の佐藤優さんが「この新書2冊を消化すれば、高校レベルの数学の欠損は完全に解消できる」と述べられているが、納得できる。