「何処かを訪ねて文物に触れる」という営為(=「観光」)に関して、「世界遺産」というモノを素材に、「ダークツーリズム」という照明を当てて照らしながら観察、考察するという本書は、広く御薦め出来る。敢えて加えるが、「ダークツーリズム」という照明を当てて照らしながら「観光」の振興に関して観察、考察した結果としての「こういう可能性?」までも示唆されていたと思う。 幅広い読者層の興味を喚起し、受容れ易いかもしれない内容であると思った。大学教員を務めていらっしゃる著者による本書だが、その何回分かの講義を大教室の隅で聴講させて頂く場面のような感じで、綴られた本文が著者が肉声で話している言葉が届くように入り、素早く読了に至った。 「ダークツーリズム」という概念?これは「好いこと」の直ぐ裏、直ぐ隣には往々にして「好くないこと」も在る訳で、何処かを訪ねて何らかの文物に触れるような際には、その双方を知る、学ぶ、考えるということもしてみては如何か、という考え方であると思った。そして、様々な文物に関して「好いこと」も「好くないこと」も「併せて!」とか「包括して」知る、学ぶ、考えるという営為は、文物を護って伝えようという全ての人達、それに一寸触れてみる機会が生じた人達にとって「有益な筈」ということが、著者自身を含めて「ダークツーリズム」を唱える人達の考え方なのだと思った。 本書は「世界遺産」というモノの概念や経過も説きながら、国内外の「世界遺産」に挙げられている様々な事例に関する「気付いたこと」、「気付かされること」、更に「考えた方が好いかもしれないこと」を適宜各章に纏めている。 実は「随分と頻繁に“世界遺産”と聞き、日本の方々の文物がそれに加えられているらしいが…で?何?如何?」という程度に思っていた面が在る。が、本書の内容に触れて「何?如何?」が少しは解ったようにも思う。