今まで井筒監督はテレビに出過ぎで言いたい放題のオッサンだと想っていたが、この映画で私の認識は名監督になった。 在日を扱った映画は「血と骨」だったが、あっさりとトップを交代してしまった。若手俳優を起用した配役が大成功で、若さの持つ勢いが画面から溢れている。また話題作りに韓流の人気俳優を起用するような軟弱なマネはしてないのも、演技指導がきちんと伝わることを第一に考えた映画作りのこだわりだろう。 メイキング映像では井筒監督の鬼のようなダメだしが、若い俳優たちをしおれされていたが、彼らにとってはいい勉強になったはず。オダギリジョーはその井筒学校の若手を観て「うらやましい」と言っていた(しかしオダギリのヒッピー姿似合いすぎ、笑)。 舞台は1968年学生運動華やかななりし京都。初っぱなから朝鮮高校の女子生徒にチョッカイ出した修学旅行の九州の生徒が朝鮮高校の男子生徒の大群にズタボロにされる。日本人に対して恨(はん)を抱いた朝鮮高校生の一致団結した集団暴力は、画面狭しと圧倒的に見せつける。ビーバックハイスクールのような世界だが、朝鮮学校の命がけの戦闘意識は気合いの入り方が違う。番長アンソンのパッチギ(頭突き:突き破るの意もあり)は強烈。 偶然居合わせた松山はこの朝鮮高校生らの猛威に被害を受けるが、この事件をきっかけに朝鮮高校生との交流が始まり、美少女キョンジャに一目惚れする。吹奏楽部の彼女に近づこうと、松山はフォークギターを始めるが、彼女の演奏していたイムジン河を坂崎から教えてもらう(ザ・フォーク・クルセダーズ、原作者である松山猛による日本語詞、レコードは発禁処分になったいわく付きで、後半の大友康平の名演技につながる「歌っちゃいけない歌なんかないんだ」)。 日本のマイノリティの現実がその背景からリアルに描れていて、一見ただの乱暴者に見える彼らが抱え得る気持ちに共感し、イタイほど訴えかけてくる。観ている間ずっと涙が止まらなかった。こんな文章ではこの映画の良さの百分の一も伝えられない。ぜひみてください。