作品自体はとてもよいです。ロジ星人と人類が対話して共存しようとしている世界です。ほぼ平易な現在形でたんたんとつづる邦訳も気に入りました。 しかし、手に取った皆様はご注意ください。本作は、映画「メッセージ」の原作にもなった「あなたの人生の物語」等の異星人との邂逅物語とはテイストが大きく異なる、サイバーパンクな作品です。 原題は「Drunk on All Your Strange New Words」、直訳すると「あなたの見知らぬ新世界全てに酔いしれる」でしょうか。テレパシーで会話するロジ星人と長時間会話すると、地球人の思念通訳は酔っぱらって(酩酊状態になって)しまうのです。この部分が邦題で消えているので、思念通訳の主人公の女性が「酔っぱらって」は暴力沙汰を引き起こす・・・を繰り返す前半にドン引きする読者も多いのではないでしょうか。少なくとも私は違和感を持ちました。そもそも本作は「人類の」ではなく、一人の思念通訳の極めて私的な「物語」といったスタンスです。会話という概念自体が異なる異星人と、お互いにリスペクトしながら本当の意味合いで心を通わせる、そして喪う。最終的には「想いは人の心の中で生き続ける」ということが、よくわかる締めくくりになっていました。 非常に好きな作品です。ただこの邦題では、ターゲット層に齟齬が出てしまうかもしれません。その点でマイナス★1です。