ゴッホ研究史上空前の到達点

今までゴッホの本を読み漁ってきたが、表面だけをなぞった、分かったような分からないような解説にうんざりしていた。やれ画家の達観した境地が読み取れるだとか、やれ教会を太陽で置き換えただとか。何を読んでも心に響くことがなかった。 ところが、『ゴッホと<聖なるもの>』は違った。この本を読んで、初めて眼を開かれるような経験を味わった。著者はとにかく細部に至るまで絵を凝視している。穴のあくほど作品を見つめ、絵画と徹底的に向き合って、そこから思索を深めている。その結果、吹けば飛ぶような解説本とは異質の言葉が紡ぎ出されているのである。しかも華麗に、美しく、しなやかに。 とにかく読んでみるべきである。このように宗教的な領域までも射程に収めた、芸術の本質と深みに迫る思考は稀有だ。国際的にも空前の、極めて優れた論考であることは間違いない。著者は、若くして金字塔を打ち建てた。