「伊賀」だが、戦国時代には織田信長の次男である織田信雄による侵入を撥ね退け、やがて織田方の大軍が四方八方から攻め込む「天正伊賀の乱」という激しい戦いで制圧されたという、少し独特な歴史を負っている。
本書はその「天正伊賀の乱」という経過に関して、「伊賀」の乱の“以前”や“以後”の事柄も含めて詳解している。或いはなかなかに「マニア!」な内容かもしれない。が、かの織田信長が足利義昭を奉じて上洛するに至る経過で「伊賀」に在った諸勢力の動きも情勢に影響を投げ掛けていて、意外に看過出来ない。そして、息子達を使って本拠地に近い諸国を押さえようとした信長の動きとも「伊賀」は関連が深い。更に小勢力が乱立していたような「伊賀」は「“戦国大名”の時代」という中でやや独特な状況に在った。そしてそれは「天正伊賀の乱」という経過の後に変質を余儀なくされてしまう。
或いは本書は「伊賀」という切口で、“戦国”という様相を呈した各地で地元の小勢力が結集した自治が行われていて、強大化する戦国大名の勢力伸張の中でそうした“自治”の側による抵抗やその鎮圧が在り、やがて豊臣政権期から幕藩体制へ移る中で“自治”が姿を消して行くという、「16世紀から17世紀の地方の様相」を明らかにしているような側面が在るかもしれない。
必ずしも有名でもないのかもしれないが、「伊賀」にも室町幕府の体制下で“守護”に任じられていた人物、そういう役目を受継いでいた一族は在った。が、「伊賀」は小国で、そういう人達が実力を蓄えて戦国大名と化すような様子は視られなかった。その他方に「争えば互いに拮抗…」という小勢力が方々に在り、彼らが申し合わせて“自治”というような体制が築かれる。
現在、「伊賀」という地域は「山間…」というイメージの場所で、中小規模の街が幾つか連なっているようなイメージではあるが、様々な勢力が見受けられる伊勢、大和、山城、近江というより大きな諸国が周囲に在る内陸国で、「伊賀」の諸勢力はこうした周囲の各地の勢力と合従連衡または敵対しながらの経過を歩んだのだ。
本書は「半ば伝説…」というような事項―例えば「伊賀の忍者」の活躍のようなこと…―を極力排し、「16世紀から17世紀の伊賀」を淡々と描き出しながら、「16世紀から17世紀の地方の様相」に歩み寄ろうとしている感だ。なかなかに面白かった!
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