今回も読者の先入観に挑戦してきます。
この辺境の惑星では、これまた実験的に「彼男」「彼人」「彼女」と三つの性別が登場します。とはいえ、これらはジョン・スコルジーの「終わりなき戦火」等、よく見かける概念なので主題ではないでしょう。
#辺境星域の住人から見ると、ラドチャーイは言語上性別がないだけでなく性別の見分けがつかない外見をしている、という描写がむしろ新鮮。
読者に挑戦してくるのは、親子関係です。主な舞台となる惑星では、子供を産み育てるのではなく施設等から引き取り(場合によってはそれが目当ての親から)、その中で優れた子供に自分の名前と地位を継がせます。文字通り名前までです。
完全な実力主義で非の打ちどころなく平等な理想的社会と思いきや、現実は名前と地位と引き継ぐために子供たちが相手を出し抜こうと画策し、ときには相手を殺そうとさえする人間関係が希薄で殺伐とした社会です。
一方で、親や兄弟の海のように深い情愛に血縁関係どころか同じ種族であることさえ必要ではないことを、ゲッグの大使が体現します。
前3部作と比較して、全体的な筆致は軽快で心地よく読み進めることができます。
いたるところに作者の「仕掛け」があって非常に楽しむことができました。
個人的に一番気に入ったのは、言語が異なる隣接星域のキャラクターとの自動翻訳機による会話です。
たとえば「ゲッグ、異常!(おそらく原語での意図は「ゲッグは頭がおかしい!」)」、その他「椅子が沈黙を与える(おそらく原語での意図は「椅子をやれば静かになる」)」…これがもういい具合にポンコツで笑い転げてしまいました。
今後も作者買いをするでしょう。後続の作品が非常に楽しみです。
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