平易な文章で、文量が多いのでもないので、紐解き始めてから直ぐに読了に至ってしまった。 本書を読んでみて、題名がなかなかに秀逸だと思った。 例えば…“サーシャ”という人物と何処かで知り合い、語らう中で「ウクライナ出身」と判り、「ウクライナ?」ということになり、「サーシャ…ウクライナの話を聞かせて?」とでも問い、「故郷のウクライナは…」とサーシャが話してくれる内容が綴られているという感じだと思う。 本書は通訳・翻訳をこなすと同時に美術家でもあって、数々の企画に携わっているという日本の方と、ウクライナからドイツを経て米国に避難しているという女性の共作である。 本文はウクライナ女性のサーシャの言である。現在24歳だというが、結局「2回の革命に加えて戦争」という事を経験する羽目になってしまった。「そんな若さで?!」と、些か驚く。そういう話題は在るのだが、本書に綴られる内容は、とりあえず大学を卒業して、未来に向けて人生を拓こうとして、避難ということになった「普通の個人」が、伝え聞くウクライナ国内各地の様子、国民性や慣習や文化、人々が少し強く意識する歴史に関係する事柄等を判り易く語っているというものである。 何か特別な地位や立場に在るのでもなく、何かの運動や潮流に関与または傾倒しているのでもない、「本当に普通の、ウクライナに数多く居る20歳代前半の若者」による「普通な知識に基づく普通な想い」、少し言葉を換えてみると「バイアスが掛かっているのでもない人達の素朴な想い」或いは「サイレントマジョリティの声」が吐露されているように感じられる本書の内容には惹かれた。 ウクライナは様々な各々の伝統を有する各地方が集まったような美しい国だ。各地方を訪ねて休暇を過ごしたこと等を大切な想い出とする人達も多い。思うことを率直に語り合うことを好むような人達が多く、様々な分野で顕著な活躍をする人達も輩出し、より豊かな未来を目指す若き国の民であることに矜持を持っていた。それが現在は戦禍の中に在り、破壊の脅威や生命の危険に晒されている人達や、そういう人達を案じる人達が溢れるような哀しい状態になってしまっている。 極々最近に至っても戦禍は長引く一方だ。本書のような「バイアスが掛かっているのでもない人達の素朴な想い」或いは「サイレントマジョリティの声」に触れてみることは重要だ。