仄かに興味を覚えて本作を手にして紐解き始めた。独特な作中世界の雰囲気に引き込まれ、夢中で本作を読了した。「応仁の乱」が起こるような頃、或いは起こってしまった頃という時代を背景とした時代モノの小説だ。 本作は2人の主人公が各々に、または手を携えて、揺れ動く不穏な時代を駆け抜けるというような物語ということになる。場面に応じて適宜視点人物が切り替わるのだが、殆どの場面は2人の主人公の何れかの目線で綴られることになる。 「作中の京」は、何か「灰色」または「くすんだ色彩」を感じさせる。その他方に、贅を凝らしたモノを使う一部の人々の場違いに華やかな色が散っている。そして合戦が絡めば、高位の有力武将の華麗な武具や、一部の将兵が身に着けた華やかな色のモノが蠢き、「灰色」または「くすんだ色彩」の街に炎の色や血の色が飛び散る。そういう作中世界の様相だと思った。 また「応仁の乱」は「戦国時代」への道筋を拓いたとされる出来事だ。以前の時代の“作法”または“定石”を外した「ゲリラ戦」的な戦術が用いられ、そういう事を担う足軽や疾足(はやあし)という兵が登場して活躍する。手っ取り早く敵兵に損害を与えようと、「投石戦術」というようなモノが大胆に採用されている。陣地に乱入して櫓を燃やすような行為を互いに仕掛け合うというような感じなのだ。こういう様子が凄い。 様々なモノを負っている熒が、揺れる時代を必死に駆け抜けようとする一若が如何いうようになって行くのか、なかなか夢中にさせてくれた。2人の周辺に現れる様々な人物達も各々に面白い。本作は広く御薦めしたい。