本書は「空海(774-835)」という「史上の人物」の「実像?」をどうこうしようということでもない。寧ろ「弘法大師」として広く親しまれている人物に纏わる伝記的な情報の他、様々な伝承や所縁の地に纏わる話題、或いは俚諺になっている事柄に関する言及、主な著作のあらましやそれらが登場した背景等を交えた「真言密教は何を説きたいのか?」という話題等が読み易い分量で巧く纏まっている。 本書の著者は、真言宗の僧侶として活動しながら、大学院での研究を進め、研究成果等を説く大学講師も務めているのだという。なるほど、「真言密教が説こうとしているようなこと」というような「取っ付きが悪い?」という場合も在りそうな事柄を含めて、誰にでも解り易いことを意図して説くという“新書”を綴る方としては適任であろう。大変に愉しく本書を読むことが叶ったことを感謝したい感だ。 1200年以上も前の偉大な知性が、民間信仰的な感覚さえ伴いながら、現在に受け継がれているというのは凄いことであるようにも思う。本当に本書は、「弘法大師」として広く親しまれている人物に纏わる様々な話題を判り易く提供することで、この偉大な文化人と「出会う」ということを経験させてくれると思う。