期待にそぐわぬ残念な本。

円谷プロ制作の「ウルトラセブン」の各話に対して、侵略者側の立場からその作戦行動について考察するという趣旨の1冊で、著者の中村宏治は巻頭で「こうした書籍はこれまでなかった。」と述べる。 確かに前例がないようだが、それは一部を除き悪の組織等が存在しない円谷作品では、シリーズを通じての侵略物は作品数が少ないという背景もあるからである。 さて、本書はことインターネット通販においては各店に於いて発売直後から品切れ状態が続き、私はようやく入手することとなった。その影響もあるのだが、期待していたほどのものではなく残念である。 前述のとおり、本書は侵略者たちの作戦行動を考察しその有意性を評価するというものだが、その場合は「完成作品において確認できることがすべて。」とされるべきだと考える。しかし著者は本放送当時の雑誌展開の記載などを資料として使用おり、これは円谷プロの公式設定とは異なるわけだから、すなわち評価の判断基準に「非公式な情報」が含まれていることになる。 この点は個人的な嗜好になるので気にならない人には気にならないのだろうが、私としては非常に疑問である。 つぎに、文章が稚拙な点があげられる。 文脈の整理がうまくいっていないため「てにをは」の使い方がおかしく、一つの文章の中に同じ助詞を反復して使用する(「セブンはエメリウム光線を発射したが、宇宙人はバリアーで防いだが、アイスラッガーによって倒された。」といったふう。)などがあり、あたかも中学生の作文のようである。 中村の著書は以前にも読んだことがありその際にはこうしたことは無かったのだが、校正にかける時間がなかったのか、あるいは長めの文章を考えるのが苦手なのか。 最後にもうひとつ。本書は巻末の約30ページが一峰大二の漫画「ゴードの巻(実相寺の『宇宙人15+怪獣35』の漫画化)」である。 この話は内容的には本書の趣旨とは全く関係がなく、よって本書に載せる理由がない。中村には理由があっての収録でありそれも巻頭文で述べられているが、本書出版の趣旨とは全く異なり著者の我儘を通したようなものであって、読者からすればページ稼ぎと疑われても仕方がない事と思う。 余談であるが、本書の帯には「一峰が描くもう一つの最終回」といったアオリが書かれているが、そもそも本話は最終回として準備された脚本ではないので、このアオリも事実とは異なるものである。