上下巻、一気読みでした。通常は、たとえ★5つをつけるほど気に入っても下巻にのみ感想を入れるのですが、本作は作者の意図するものと、日本の読者の期待するものに乖離があるようなので、あえて上巻にもレビューを書いています。本作がSFとして目指しているのは「もし巨大隕石に直撃された」として、当時の社会が、人が、そしてその価値観が、どのように揺らぎ、改変されていくかをできるだけリアルに描くこと、と思います。SFですが、人物や、一つ一つの出来事が人にどのような影を落とすか丁寧に描いています。登場人物は、弱みをもった人間です。当時の世情を鑑みると、人種差別も必ず起こり、閉鎖空間でヘイトにはさらに輪がかかるでしょう。そういったことを、できるだけ当時に世情に沿いつつ(SFですが)、平衡世界に落とし込んでいっています。華々しいスペースオペラを期待すると肩透かしを食らうでしょう。月面にただ立ち、息をして、静かに地球による日食を見つめたい、と思う読者は、まさに手に取るべき作品でしょう。
他のユーザのコメント