キネマ旬報ベストテン2位

裏のジャケットに「日本映画史に残る名作が待望の初DVD化!」とある。全くその通りである。この映画が今までDVD化されなかったのが本当に不思議で、日本の映像文化の貧困を物語っていると思う。しかも、今回の発売元は本家日活ではなくて、DIMENTIONのDIGレーベルである。今村昌平監督の「果しなき欲望」もそうだが、今まで出なかったのは権利関係の問題もあったのだろうか。 自分がこの映画を初めて見たのは、封切から数年経った大学時代、池袋の「文藝地下」だった。あれからもう40年以上、本当に久々の再見である。今では考えられないが、男女が文通で知り合うというのが時代の雰囲気を感じさせ、非常に懐かしい。確かに自分も覚えているが、昭和30年代は雑誌に必ず文通希望欄があった。それによってこの映画のように男女のドラマが生まれた訳だ。現代に於いては携帯やインターネットによって知り合い、男と女のいろいろな事件が起こる事になる訳だが、そのアイテムが変わっただけで、男女の実相は何ら変わることがない。 浅丘ルリ子は美の絶頂期でスターのオーラで輝いているが、その対極に地味な小林トシエを置き、演技は素晴らしい。他の出演者も小沢昭一、加藤武、露口茂、若き江守徹、大滝秀治、辰巳柳太郎、加藤治子など主に演劇人が脇を固め、その充実度が画面の厚みを増している。昔の日本映画は、とにかく脇役が演技巧者ばかりだったのだ。こういう人がいなくなってしまって、この点が現在の日本映画の薄っぺらさになっていると思う。 この年の「キネマ旬報」ベストテンが凄い。1位が「心中天網島」(篠田正浩監督)、2位がこの作品で、3位が「少年」(大島渚監督)である。この3本ならば、どれがベストワンになっても可笑しくない充実振りである。またこの年、山田洋次監督の「男はつらいよ」が続編と合わせて2作、ベストテン入りしている。この頃の日本映画界は既に斜陽、作品のレベルも昔と比べて下がったと言われたものだが、現在に比べれば棄てたものではない。それだけ今が酷すぎるということか。