朱天文さんと侯孝賢監督の貴重な記録

私が偶然台湾の巨匠侯孝賢監督の作品に目覚めたのは、去年のコロナ禍で身辺整理をしていたら、スクラップブックの中に、「百年恋歌」の評判が載っていて、すぐにDVDを購入し、観賞したら、素晴らしく美しかったからです。その後次々と作品を観ていき、嵌まってしまいました。でも、1990年代のDVDボックスは高価で観ていません。それでもネット配信で、「好男好女」「憂鬱な楽園」を観ることができました。「戯夢人生」と「フラワーズオブシャンハイ」を観たいです。この本には侯孝賢監督のスナップ写真が沢山載っていて、とても嬉しかったです。撮影時の厳しい眼差しにはドキリするものがあります。例えば「珈琲時候」の古書店内の撮影時の監督の様子も、内容は穏やかな会話なのに、凄く真に迫ったものを感じました。朱さんのこのエッセイで、一番意外だったところは、「侯孝賢の映画が最も美しく輝く瞬間というのは、すべて撮影前に議論する段階で、実際の撮影でどうしても解決できない問題が出てくるので、最終的に仕上がった映画は本来持っていたはずの活力を失っていると感じ、とてもがっかりする」とのことでした。私が名作だと感じても納得がいかないものが仕上がっているのか、と不思議に感じます。その他、彼は小津安二郎の影響下にある、と良く言われるが、実際に小津作品を観たのは「童年往事」完成後で、その後数作品を観たが、どれも同じようで観ることが辛くなってきた、と明かしています。女性については朱さんの小説にも深く影響されているそうで、「好男好女」の現代パート、「百年恋歌」のスーチーの複雑な女性関係とか、「珈琲時候」の主役の性格などだそうです。とても貴重な文章を発行して下さり有り難うございました。明日から侯孝賢監督40周年記念の映画祭が行われるそうですね。コロナがあって行けませんが、盛況をお祈りしています。