愛の情感が込められたマーラー5番

これは凄い名演。新婚・蜜月の頃のマーラーが、愛する者の切ない気持ちと悦びを、たっぷりと歌い上げた大曲を、アシュケナージは、絶妙な棒さばきで、見事に刻み込んだハイブリッドCDです。 第一楽章では、タタターン、タタターン、と、ベートーヴェンの5番と同じように、テーマが始まります。しかし、べートーヴェンとは全く異なり、悲哀感がいっぱいであり、次第に、悲しみに対抗する気概へと変わってきます。やがて、にわかに、恋情を表すパッセージが現れ、マーラーの心情が吐露されます。そして、適度の間をおいて、低弦一発、第一楽章が締めくくられます。この間の音楽づくりが、素晴らしく、深く感銘しました。 ヴィスコンティが映画「ベニスに死す」において用いた第4楽章アダージェットもまた、聴き所と思います。 バッハのフーガを織り込んでいるともいわれるこの曲、アシュケナージは良く心得た指揮振りと申し上げたいと思います。