聖俗入り乱れる上質のエンターテインメ

サンティアゴ巡礼は、お遍路さんや熊野詣に通ずるところがあって、日本人にも人気があるという。そんなことも知らないで本書を手にしたのは、著者がリュファンだったから。フランスのベストセラー作家で国境なき医師団の重要メンバーで、アカデミー・フランセーズ会員。地位も名もある人物が、裃を脱ぎ捨てて、ボロボロになりながら800キロ以上を歩き通したことに感興をそそられた。中身は思わずニヤリとさせられるエピソードの連続。信仰の篤い(はずの)人々を引き付けて止まない巡礼の記は、諧謔精神溢れる一流作家の手にかかると、聖俗入り乱れる上質のエンターテインメントに。でも、いいのかな。トイレが見つからず、公園の木陰で〇〇〇したなんて話を書いちゃって。事程左様に、著者が素の自分と向き合う姿が至る所で見られるが、実はそれこそが本書の大きな魅力。リュファンに言わせると、段々キリスト教を超越して、仏の悟りの境地に近づくらしい?本書は静岡大学の研究叢書の一冊と書いてあるけど、全然そんな堅苦しい本ではなくて、こなれた翻訳のお陰もあって、すごく楽しめた。値段が高いのが玉に瑕だけど、一味違う巡礼記です。