この凄演を何と形容したらよいのだろう。チェリビダッケのチャイコフスキーを耳にするのは初めてではなく、この五番の盤もかつてEMIから発売された当初に購入していたのだが、久しく聴いていなかった。独特のどっしりとしたテンポで開始される第1楽章から、この演奏がただならぬものであることを予感させる。名人揃いのミュンヘン・フィルのオーケストラの面々が前進しようとするのを、指揮台のチェリビダッケが厳格な眼差しで手綱を引いてコントロールするさまが目に浮かぶ。巨大なアルプスの山々を仰ぎ見るかのような、とてつもなくスケールの大きな音の塊に圧倒されるが、決して絶叫するようなロシアのオーケストラの演奏にみられる荒らさとはまったく別次元の音響であり、ピアニッシモの精妙さとフォルテッシモの音の厚みとのダイナミックレンジの広さは、この類い稀な指揮者でなければ得られないものであろう。唯一の難点は、ライナーノーツが非常に薄く簡素で雑なものへと変更されてしまったことである。
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