人間のアイデンティティとは

凄い真面目な作りの映画で、娯楽・エンターテインメント要素は少ない(サスペンス要素の面白さはあるが)。2022年「キネマ旬報」ベストテン第2位、日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞・助演男女優賞他、昨年度の映画賞を席捲した。 安藤サクラが再婚した「ある男」が事故死する。谷口と名乗っていたが、弔いに訪れたその兄から別人と知らされる。安藤は知り合いの弁護士妻夫木聡に男(窪田正孝)の身元調査を依頼する。妻夫木は徐々にある男の正体に近づいてゆくのだが、その中で自らのアイデンティティをも考えざるを得ない道程を歩むことになる。妻夫木は在日三世であり(日本に帰化している)、この設定も近年の日本映画ではなかなか難しい設定である。自分は原作を読んでいないが、平野啓一郎の原作にはきっとこのあたりのことは相当書き込まれているのであろうと推測している。亡くなってしまったある男の存在と言い、一言で言えば人間のアイデンティティとは何かを考えざるを得ない映画である。