現在では作られない人間ドラマ

昭和46(1971)年公開作品。当時(撮影時)、岩下志麻はまだ30歳位だと思うが、貫禄十分で、既に大女優の風格が漂っている。現在の30歳前後の女優など子供で、ジャリ感が漂うが、全く女優としてのオーラが違う。現在、真の女優と呼べるような人がいるだろうか。テレビドラマに出てくる人たちは、タレントである。日本映画の全盛期は過ぎていたとは言え、昭和30年代から40年代にかけて、松竹の看板女優として年間何本も出演し会社を支えてきた自負が、現在のチンピラタレントとは背負ってきたものが違いすぎて、醸し出す雰囲気は比べ物にならない。 この映画は、40年以上に渡る話なのだが、低予算のため場を限定した人間ドラマとして展開する。地味な話だが、岩下を始めとして、北林谷栄、緒形拳、北大路欣也、山本学、長山藍子、岸田今日子、中村嘉津雄、江原真二郎、河原崎長一郎、加藤嘉など当時の映画・演劇人による演技が堪能でき味わい深いドラマとなっている。ジャリタレの恋愛ドラマやコミックの映画化ばかりになってしまった現在の日本映画界では、もう絶対作られない種類の映画だろう。