戦争体験を風化させないためにも・・・

百田氏の作品は『影法師』に続き3作目です。デビュー作だったんですね。正直なところ読み始めは、何でそんなに評価が高いのかと思いました。 小説の構成としてはダラダラと長すぎ、祖父(宮部)の過去を知る戦争体験者を訪ねていくストーリーの中で太平洋戦争の実情の描写が延々と続くだけなので・・。 太平洋戦争の実情を知ることができるという点ではいいのかも知れませんが、はっきりいってこの部分はほとんどノンフィクションの内容です。 小説的な本筋のストーリーの核心にせまってくるのは全575ページのうちの、ようやく最後の1/3くらいのところからです。 クライマックスに近づくにつれ、より祖父の最期、死の場面を知る戦争体験者を通じて真相が明かされていく展開となり、ようやく現在の人間との関係性がつながり、祖父の最後の真相を孫の姉弟が知って、愕然とするという小説(フィクション)らしい展開になります。 姉弟にとっての母の父は実の祖父である宮部と、祖母の葬儀までは実の祖父と思っていた現在の祖父とふたりいることになるのですが、全く無関係と思われたそのふたりの関係についての秘密も明らかになります。ラストのクライマックスのところはさすがに引き込まれていき、うるうるっときました。 宮部の人間像は、何か『影法師』の彦四郎にも通じる部分があるなと感じました。 たった今さっき映画も観てきました。原作読後のタイミングで映画を観たのは初めてで記憶が新たなだけに余計にうるうるときて、涙をこらえながら観ました。原作を損ねることなくほぼ忠実に仕上がっていると思います。特攻隊員をテロリストと同一視する思想(私はそんな思想があることを知りませんでした)については、姉に関わる詳細描写がカット、弟の合コン場面の中で口論のタネとなった話で改変されて出てきました。ややこしい思想は一切カットしても良かったのではとも思いますが触れないわけにはいかなかったのでしょうか・・? 個人主義的な考えが許されない時代にあって冷静で当時としては稀有な現代的な考えをもった人間であった宮部久蔵という人物を通して究極の人間愛、家族愛が描かれた物語です。 原作巻末の書評をアタック25の司会でも有名だった児玉清さんが書かれており、また、映画でも今年亡くなられた夏八木勲さんの遺作となり、亡くなられたお二人が関係されていたということも印象に残りました。