虐待

大分の海辺の町に一人、引っ越してきた貴瑚(きこ)は、言葉を話せない少年と出会い、物語が幕を開ける。少年は虐待されていたのだが、貴瑚自身も辛い過去の持ち主。彼女を取り巻く善意、あるいは悪意の人々が絡んで話は展開する。伏線が巧みに張り巡らされており、きっちりとした構成。文体も読みやすい。他の鯨が聴きとれない、高い周波数で鳴く鯨のエピソードが、なんとも効果的。単なるお涙頂戴でないのは筆力だろう。