面白いです

犯人の女性の行動と心情を中心に語られる前半と、誘拐された子供側から語られる後半に分かれます。前半で犯人にたっぷり感情移入させられてしまうので、つい誘拐を肯定してしまいそうになります。後半読み進めるにつれて『幼い日の美しい思い出』的な甘いものじゃないと思い知ります。 実の母親は悪い妻、悪い母のように描かれていますが、彼女にしてみれば慣れない東京に出て来たら夫は浮気、相手は妊娠。自分の不用心のせいで子供は連れ去られ、やっと再会できたと思えば当の子供は自分を他人の目で見、おびえ、とまどっておもらしまでしてしまう。これは相当キツイと思います。 この実母を中心に据えて書いても面白い物語ができるでしょう。そうしたら、たぶん私は彼女にもどっぷり感情移入してしまうでしょう。 母系の物語、とでもいうのか笑っちゃうくらい男性が情けないお話です。記号的でしかない。 ラストは瀬戸内の海の美しいイメージとも重なって、閉塞から抜け出した彼女(それも不倫の結果、というのも皮肉ではありますが)は周囲の美しさをきちんとあるがままに受け入れ、運命に流されずきちんと自分の足で歩いて生きていくだろう、と自然に思えてきます。 「八日目の蝉」というタイトルにもいろいろ考えさせられました。