良い小説!喜びに浸れます

関東のとある私大に近いボロアパート。 一つ屋根の下に住まう10人は、ある者はニコチン中毒の2浪2留、あるものは漫画オタク、ある者はお茶の間クイズ王と、てんでばらばら。 その10人が、その10人きりで、1年もない限られた時間の中で、かの箱根駅伝を目指し走る! はっきり言って荒唐無稽だと思う。 ドット絵の王様に『そなたこそが世界を救う勇者だ!』と言われるのと大差が無いファンタジーだ。 だが、それで興ざめになっては勿体ない絶対の面白さがこの小説にはある。 丹念な取材や、緻密な計算が張り巡らされていて、あり得るのではないかと錯覚させられる。 箱根駅伝が(というよりも感動を押し売りする暑苦しい徳光和夫が)好きではない私が、何度も落涙したのだから間違いない。 いわゆるスポ根でありながら、汗臭さと無縁な清々しく瑞々しい、内面描写に優れた文体が新しい。 それは腐女子を自負する著者のBL嗜好が良い形で投影されたのではないかと邪推している。 ともあれ、最近読んだ中では出色の作品。