涙のコツ

京都・原田病院。老人病院とも呼ばれ、殆ど看取りのためにあるような、小さな病院が舞台。雄町哲郎は元来、大病院で将来を嘱望された医師だったが、妹が病死し、その息子を引き取るために退職。原田病院に赴任した。4話の連作短編には、哲郎の優しさ溢れる医療が綴られている。ベースには、スピノザの哲学があり、それがタイトルにもなっている。また医師、患者が個性的であり、大病院から週1回、研修に来る若い女医との微笑ましさも。作者は以前、長野県で地域医療に従事し、その病院を舞台に「神様のカルテ」シリーズを書いていたが、京都に転勤したのだろうか。前シリーズでは泣かせる作品が多く、今回も例外ではないが、ちょっぴり笑いの要素を交えるようになったのは進歩といっていい。テレビ・ドキュメンタリーでは「賞を獲るなら難病もの」と言われ、泣かせるだけの小説では底が浅いから。