レベルアップした出版業界を皮肉る短編集

著者がこのような「笑」シリーズという短編集を書いていることは全く知らなかった。 本書を読んだ後に前作「黒笑小説」を読んでみたが、内容も可笑しさも格段にアップしていることがわかる。12編の短編はそれぞれ個々の話として十分におもしろいのだが、同じ登場人物が出てきて内容も微妙につながっているので、相乗効果で全体として良いものになっている。灸英社、金潮書店など実在の出版社を連想させる出版社名や、文学賞のネーミングもいかにもありそうな話だと思わせるし、熱海圭介、唐傘ザンゲという作家や獅子取、神田、広岡という出版社社員もモデルが実在するのではないかと思ってしまう。 特に面白かったのは「小説誌」。「小説灸英」編集長神田の中学生の息子達数名が職場見学に来て、鋭い突っ込みを入れるのだが、対応した編集者の青山がたじたじになり、ついには切れて「馬鹿たれ作家たちの相手がどんなに大変か」を叫び、神田の息子がお父さんの仕事の過酷さを知るというものだ。鋭い突っ込みの一例は「小説誌に掲載されたものは下書きで単行本にするときに書き直すのならば完成品ではない、そんなものを売って恥ずかしくないのか。詐欺ではないか」とか「連載終了しても単行本化されないのは失敗作、その失敗作が掲載されていた小説誌は不良品ではないのか、リコールすべきではないのか」など・・だ。ちょうど電車の中で読んでいて笑いをこらえるのが苦しかった。