異界のケモノが縦横無尽に飛び回る

森見氏の作品は、「~乙女」が最初でその後、繰り返し読んだ。繰り返し読んでいるということは、森見ワールドが性に合っているということだろう。ただし、はじめに書いておくが、氏の文体や表現方法は独特で、生理的に受け入れられないという方がいるのは否めない。 やたらと情景描写が細かくて、畳みかけるように読み手に迫ってくる。まるで回りに見えるものをすべて落とさずに書き込まないと気が済まないかのような勢いである。それでいてテンポが悪いかというと、そうでもなく一気に押し流すように読ませる技量は、相変わらず。 帯に「漆黒の京都奇譚集」とあるだけあって、本作の内容は、少し謎めいた作品のオムニバス。それを繋ぐ縦糸は相も変わらず「京都」という舞台であり、横糸に相当する部分は表題「きつね」というか異界のケモノであろう。そんなケモノが縦横無尽に作中を飛び回る。そのケモノの描写が、妙に生々しくて、ぬるぬるしていて、人間臭くて、読みながら鳥肌が立つ感じがした。各章が他の章の謎解きになっているわけでもなく、謎は最後まで謎だが、秋の夜長に世界に浸るのにはちょうどいい。他の森見ワールドよりも脳天気なドタバタがないだけ、万人には馴染みやすい内容かも知れない。 なるほど確かに「第2章!」だ。