チェス盤で繰り広げられる美しい光景

小川洋子の作風がもっとも活かされていると思われるストーリー。今まで何冊も読んだ彼女の本の5本の指には入れたい。 今回のテーマはチェスだ。タイトルの謎も読めば理解できる。 通常とは違う誕生をし、育ち方をし、世間からすると奇妙と受け取られない人物からチェスを学んだ主人公の少年が成長し、チェスを通して人生の旅をする物語。 物語は淡々と静かに流れる。読者の気をひくラブシーンなど余計なものは一つもない。 しかし、小川洋子の描いた世界の中に気づけば取り込まれてどんどん読み進めていた。三百数十ページはあったが一気に読むことができる。もちろん、チェスのことなど分からずともよい。文字の世界なのにまるで絵画を眺めているような気分にひたれる。 なんと巧妙な仕掛けがなされているんだろう。 あまり、書きこむとばれてしまうので書けないから、もうこれは読んでいただくしかない。小川洋子を知る人は当然、知らない人にも。静かだが、巧妙な美しい光景を堪能できることだろう。お約束する。