泣きたい夜もある。

若い頃、死ぬほど読んだ。先日、宮本輝の他作品を読む機会があり、20年振りに読み返してみた。 「錦繍」は宮本輝の最高傑作とまではいかないが、「泣ける小説」として有名な作品である。宮本輝は、人間の描き方がうまい。手紙を読んだあとの令子の描写が特に見事だ。久しぶりに読んでみて、モーツアルトのくだり、宗教的な隠喩など、古臭く感じるところもあるが、終盤あたりに感じる清涼感が実に心地よい。 「錦繍」とは、山などが紅葉で錦の刺繍で着飾ったように美しく輝いているさまをいう。二人の男女の手紙が、織り成すこの物語を読んだあと、あなたもこの絶景を思い浮かべることが出来るであろうか。ぜひお試しを。感涙必至のため、電車の中など人前では読まないほうがいい。恥ずかしいぞ。