芝居小屋

江戸・木挽町の「森田座」脇での仇討ち。父を殺された若侍・菊之助が、仇の下男を討った。そして二年後、別の若侍が一部始終を知りたいと周辺を訊き回る。江戸三座が舞台になっているため、木戸芸者や戯作者、小道具職人が証言し、同時に「曽我物」「菅原伝授」などの演目も絡んで、テンポ良く進む。こうした人たち、また芝居が伏線になっていて、これまでにない時代小説に仕上がっている。展開に釈然としない部分が少しくあるものの、芝居も小説も所詮、虚構の世界でと割り切れば良い。「あだ討ち」と敢えて平仮名にした表題も冴えており、最近の直木賞受賞作では一番の出来ではないか。