多くの温泉宿を探訪しているが、このお宿はとても良い。 4人ほどの小さな湯船に浴槽内から投入され、かけ流される源泉はフレッシュな状態を保ち、会津東山温泉の湯のポテンシャルがこれほどだったか、と思い知らされる。一晩の湯治で、積年の疲れが洗い流されるようだ。 2食付きで6000円台の料金は破格である。追加で頼んだ地酒の純米酒が一合300円とのこと。普通の旅館なら1000円も取られるだろう。清々しいほど安い。料理は主人の手作りで、板前の作った懐石ではないが、価格からすれば申し訳ないほど充実している。 寝具は快適である。古い建物のため床が傾き、軋み、鍵が南京錠だったりするが、歴史的に「古びている」のであって、清掃はきちんとされている。 過去口コミに「汚い」との意見が散見される。しかしこれは「歴史的価値」を貴ぶかどうか、という思想の問題である。「汚い」と主張をされる方は、町に残る文化財建造物を「機能的ではない。古くて汚いから壊せ」と主張されるタイプであろう。またそれも一つの価値観であり、彼我の思想の差はおそらく埋めることはできない。そうした向きの方は、ここに泊まらず、ゴージャスな近代ホテルに泊まるほうがよいであろう。 したがって、歴史と自然を尊べる精神の持ち主こそ、本旅館をチョイスすべきと思う。 ご主人は人柄もよく、お客を大切にして向き合う方である。会話して交流するのも楽しい。泰然と旅を楽しむ心の余裕を持つ方にこそ本宿をお勧めしたい。