これまでに様々なホテルに宿泊してきましたが、粋世は宿に泊まるためにまたそのちを訪れたいと思う数少ない宿です。こちらの宿を選択する前にいくつかのことを理解しておかなくてはいけません。 ①築90年の町屋を当時の趣を残したまま再生した宿です。防音生、断熱性は現代の建築には及びません。騒ぐようなお客さんが宿泊する宿ではないですが、足音や話し声などある程度は届きます。館内はそれなりに寒いですが、客室や共有部はしっかりと暖房されています。 ②壁なども元々の味をできるだけ残しておられるので、一部汚が見られたりしますが、これも歴代の住人が会談をのぼるときに手をついた跡だったりするので、こうしたものを人の営みの歴史として楽しめる方に向いています。 古い建物を宿として利用するために実に様々な工夫をなさっていて、宿主様から大変興味深いお話を聞くことができます。 トイレは、各部屋に最新式のウォシュレットが完備されていますが、お風呂は共用です。とはいいましても広めのユニットバスが3カ所あり、貸し切りでその都度お湯を張って利用できますので大変快適です。タオルや基本的な石けん類は提供されていますので、ビジネスホテルに劣る点はまったくありません。 共用スペースは畳の広間になっていて、コー非オーやお茶などがセルフサービスで無料提供されています。特筆すべきは、非常に希少なVictrola製の大型蓄音機の展示です。運が良ければ宿主様がSP盤をかけてくださるかもしれません。電気的アンプで大音量再生を実現する陶磁の高い技術を楽しませていただき、これだけでも宿泊した価値があったというものです。 周辺は、住宅街で、コンビニも近くはありませんが、徒歩5分ほどにあるスーパーまでの道のりは、昭和の匂いを色濃く残していて非常に良い雰囲気です。畳屋さん、豆屋さん、小さな書店やテレビ何台かの展示で手狭になる電気屋さんなどを見ながら昔を懐かしむことができる環境です。 宿主様のお人柄もあいまって、とても心に残る宿泊となりました。