筆者の肩ひじ張らない非常に客観的で冷静な観察と語り口が特徴でこのような中国本はこれまでに存在しなかった。隣国、かつ近年成長著しく、問題も多く、我々日本人は大なり小なりある種の感情を掻き立てられてしまう国家であるためにこのように観察すること自体が大変難しい。 本書ではまず中国では共産党という党組織が最上であり、この下に国家と軍隊という2つの下請け会社が存在しているという構図を指し示している。中国の組織解説が非常に細やかであり中央から末端組織まで分かりやすく提示される。そして徹底したリアリスト集団である中国共産党の研究計算されつくした制限された自由空間の統治方法が解説されている。グレーゾーンの扱いがとても上手であること、とにかくコスパがよいことが衝撃的で我々が不毛な?選挙・政局で消耗している間に彼らは何歩も我々の先を進んでしまうのだ。「党は国家と軍の人事権をもつ人材バンクであらゆる組織に党員が存在し、これがスライド人事で横方向に動くためにエリートたちは短期間に多くの現場で多くを学ぶことができる」「アカデミアでも企業でもそれぞれの強みをもった人材が党という統一プラットフォーム内で議論と政治技術を出し合って共有知をつくるという強みははかりしれない強靭さがあります」「選挙という正当性を付与されていないからこそメンツにこだわり続けなければならないたとえ国益を害しても」対外的宣伝工作の重要性。党(人治)がすべてをコントロールしているため法治の及ばない部分がある、ここを狭めるべく紀律治という党の掟で縛る。日本でイノベーションを起こすには規制緩和、規制だらけの中国ではグレーゾーンからイノベーションが生まれる。中国発の情報の読み解き方・党中央の解釈を読みとる。対米基本方針「戦いません、勝つまでは」チャイナスタイルを容認する国家が増えてきているという事実。アメリカよりチャイナの方が多国間協議を長期戦略で進めてきた。我々は制限された自由を持つ中国に対して悪い印象を抱くため中国人民も同様と考える。しかし中国人民のうまくやっている、中国共産党を容認している姿が印象的であった。なるほどもはや最近ではあまり見なくなった「中国崩壊論」がいつになっても現実とならない訳だ。 今後何度も読み直す必要がありそうだ。現在最も優れた中国本である。
期間限定の特別価格でプレミアムサービスを体験
あなたのビジネスを次のレベルへ
© Copyright 2025, All Rights Reserved
巨大中国を動かす紅い方程式
筆者の肩ひじ張らない非常に客観的で冷静な観察と語り口が特徴でこのような中国本はこれまでに存在しなかった。隣国、かつ近年成長著しく、問題も多く、我々日本人は大なり小なりある種の感情を掻き立てられてしまう国家であるためにこのように観察すること自体が大変難しい。 本書ではまず中国では共産党という党組織が最上であり、この下に国家と軍隊という2つの下請け会社が存在しているという構図を指し示している。中国の組織解説が非常に細やかであり中央から末端組織まで分かりやすく提示される。そして徹底したリアリスト集団である中国共産党の研究計算されつくした制限された自由空間の統治方法が解説されている。グレーゾーンの扱いがとても上手であること、とにかくコスパがよいことが衝撃的で我々が不毛な?選挙・政局で消耗している間に彼らは何歩も我々の先を進んでしまうのだ。「党は国家と軍の人事権をもつ人材バンクであらゆる組織に党員が存在し、これがスライド人事で横方向に動くためにエリートたちは短期間に多くの現場で多くを学ぶことができる」「アカデミアでも企業でもそれぞれの強みをもった人材が党という統一プラットフォーム内で議論と政治技術を出し合って共有知をつくるという強みははかりしれない強靭さがあります」「選挙という正当性を付与されていないからこそメンツにこだわり続けなければならないたとえ国益を害しても」対外的宣伝工作の重要性。党(人治)がすべてをコントロールしているため法治の及ばない部分がある、ここを狭めるべく紀律治という党の掟で縛る。日本でイノベーションを起こすには規制緩和、規制だらけの中国ではグレーゾーンからイノベーションが生まれる。中国発の情報の読み解き方・党中央の解釈を読みとる。対米基本方針「戦いません、勝つまでは」チャイナスタイルを容認する国家が増えてきているという事実。アメリカよりチャイナの方が多国間協議を長期戦略で進めてきた。我々は制限された自由を持つ中国に対して悪い印象を抱くため中国人民も同様と考える。しかし中国人民のうまくやっている、中国共産党を容認している姿が印象的であった。なるほどもはや最近ではあまり見なくなった「中国崩壊論」がいつになっても現実とならない訳だ。 今後何度も読み直す必要がありそうだ。現在最も優れた中国本である。