この本の出版は09年。 08年にリーマンショックが起こり、年越し派遣村が話題になった時に「マルクスが資本論で書いたことが実際に起こっているでしょ」と言うスタンスによって書かれています。 しかしながらそれから時代が経って安倍政権が「労働規制の緩和」「労働市場の流動化」「円滑な労働力移動の実現」を掲げている「今」にこそむしろ読む意味があるのだと思います。 また人間の雇用を機械(ロボット)+IT(コンピューター)がどんどん奪っていく世界が来る直前かもしれない「今」にこそ読む意味があるのだと思います。 マルクスが生きた時代は資本主義が発展してどんどん労働者の労働条件は悪くなった。 しかしそれが過ぎると革命が起こる。 これがマルクスの理論。 そして実際にロシア革命が起こり、皇帝一族や金持ちが惨殺されていく。 これはヤバいという事で他の国々は福祉国家をつくった。 しかしソ連を中心とした社会主義国の崩壊によって西側陣営(日本も当然に含みます)福祉国家を捨てる。 「資本主義が勝ったのは市場の力を生かすことができたから」だと考えた。 しかし「新自由主義」を推し進めたらマルクスの時代に戻っているではないかと。 これが「資本論」に入る前の池上「前段階」解説。 マルクスは資本主義が発達した結果革命が起こると「予測」しましたが、実際に革命が最初に起きたのは資本主義があまり発展していない「ロシア」で予想は大外れ。 またマルクスは革命がおこって労働者の天国(地上の楽園?)が来るところまでは書きましたが、具体的にはどうすればいいのかは書かなかった。 「予測」が外れたことと「革命後の具体策」がなかったことは致命的にポンコツだったのかもしれませんが、マルクスが「資本論」で見せた「資本主義」の分析は当たっているのではないかとも考えられる訳です。 当たっているのか当たっていないのかを知るために「今」この本を読むことをお勧めします。 「当たってない」と判断する事になっても、それはそれで意味があるのだと思います
結論から言えばこの本は読んでおいた方がいいと思います。 そもそも複数の予測があり、その予測通りに2030年になっているのかどうかは分かりません。 でもこの予測からどの程度ずれているのか、ずれているとすればなぜずれているのかを考えることは非常に有益だと思うからです。 つまりこの本の予測を基準(ベンチマーク)にすればいいと思います。
基本的には今まで藤巻健史氏が述べてきたスタンス(前「日本破綻」シリーズ2冊)と変わっていない。 今まで藤巻氏は財政破たんによるトリプル安(円・国債・株)を述べてきたけど、震災が起きたことにより、さらにまずい状況になったと言うのがこの本の趣旨のようです。(2011年6月初版 あとがきの日付は2011年5月) 藤巻氏の言葉を借りれば「この震災が起きたことにより、財政破綻の時期が早まるだけでなく、その谷が一層深くなり、より長く最悪の経済状況が続くと思うようになったのです」(p5) 簡単に言えば次のような趣旨です。 元々財政破綻寸前でやばい状況+震災→元々起こる可能性があった円・国債・株のトリプル安が早く深くやってくると言う激マジやばい状況→超インフレで銀行預金は紙くず(同然に)→外貨分散投資をすべし(今は攻めの投資ではなく守りの投資へ) 以前の考えとの変更点があるとすればたとえば「円・国債・株」のトリプル安が起こる契機が「国債の未達」(国債の買い手がつかない)であるとの考えだったのが、その可能性を残しつつじわじわと底なし沼のようにトリプル安になるかもしれないと指摘している点です。 他には「国債の日銀引き受け」をほぼやらざるを得ないだろうと予測していることです。 では「具体的にどうすればいいのか?」と言うと分散なので1国に集中させないという前提のもと「少しリスクを取りたければ海外の株式・株式投資信託・REIT、リスクの嫌いな場合はMMF」を勧めています。期間が長い債券は世界的にインフレが来るとの理由で遠慮するそうです。 ちなみに藤巻氏のアメリカびいきは変わっていません。 「BRICSへの投資も悪くないですが、まずは米国への投資を増やした後だと個人的には思います」(p142)とあり約2ページにわたって「ドルは基軸通貨であり続ける」と書いています。 日本人で言えば大前健一氏は「私の足が完全にアメリカから遠ざかってしまった」とおっしゃっています。(「お金の流れが変わった!」まえがきより) リーマンショックでボロ儲けして名を馳せたジョン・ポールソン氏は09年夏時点でドル暴落を見込んでいるそうです。(「史上最大のボロ儲け」より) はてさてアメリカ(ドル)についてどちらの予想が当たるかどうか。
恒常的とすら思える不景気状態。(いざなぎ景気超えの時もほとんどの人が豊かさを実感できませんでしたよね?) 失われた10年が20年となり、もはやエンドレスとなっていって失われているのが通常であるのではないのかとすら思える日本経済。 この本では日本における不況の恒常化の理由を「人口の変動」に求めています。 世間で言うところの少子高齢化ということになるのでしょうが、著者によると違うそうです。 大事なのは「生産年齢人口の変動」。 しかしながら生産年齢人口という言い方もあまり良くないとのこと。 キチンと言えば「生産年齢人口」ではなく、「消費年齢人口」と言った方が良いとのこと。 生産という供給視点で見るのではく、消費という需要側に視点をシフトする。 経済専門家には当たり前なのかもしれませんが、経済ド素人人間は「名称」に引きずられてしまう面がありますので(少なくとも私はそう)、この指摘はまさにコペルニクス的大転換でした。 つまるところデフレの正体はこうなる。 働いて賃金を得て、得た賃金で消費をしてくれる人たち(=消費年齢人口)がどんどん減っている。よって内需が活気づかずデフレになる。 本来は高齢者がお金を使って欲しい所なのだが、病気などを(過度に?)心配して全く使ってくれない。 よってお金を使ってくれる人たちがどんどん減っているので日本はデフレから脱却できない。 経済ど素人の私にはかなり納得できる理論です。 勿論、色々な物の見方があるし、経済を一面的に見れば解決できない事も承知しています。 この本では消費への影響として「賃金」を重視している訳ですが、株式価格などの金融資産を重視する考え方もあり得ますし。(「資産効果」というやつですね) それでもこの本の論理はかなりの説得力があると思います。 少なくとも経済ど素人の私には説得力がありました。 amazonのレビューやコメントでは喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が行われているようです。 個々の議論については私にはレベルが高すぎてついていけません。 しかしながら従来の経済学からこの本を批判するのであれば、従来の経済学が失われた20年を放置したままの結果になり、これからの日本の経済に大きな希望を与えてくれない現実をどうにかしてほしいと、経済関係に身を置かない人間としては切に思います。
日本近現代史を専攻されている東大教授の先生が高校生・中学生へ行った授業を収録。 歴史部にいるような学生さんとは言え質問の内容が高度です。 少なくとも私が高校生の時よりは知的レベルが高い。 本の内容とは直接関係ないけど、まず学生さんのレベルの高さに脱帽。 主に日清戦争~第2次世界大戦終戦までの日本のことを述べています。 学者先生なので様々な資料(最近見つかった資料・研究成果を含む)からの引用も多いです。 この点を不満と捉えるか、学者先生と話と言うのはそういうものだと捉えるか、面白いと捉えるかは評価が分かれるかもしれません。 私は面白いと感じました。 例えば日露戦争の時、従来は政府内で元老・伊藤博文以外全員戦争賛成だったという風に思われていたけど元老・山縣有朋も反対だったことが分かったそうです。(NHK総合「坂の上の雲」では伊藤だけが最後まで反対と描かれていました) また第二次世界大戦末期民需関連の株が上がっていたそうです。 そんなときに株式市場があったのも驚きですが、投資家の中にはきちんと終戦を読んでいた人がいたんですね。「やるな、日本人」という感じです。 しかし私が最も印象的だったのはイギリスのE・H・カーと言う歴史家に関するお話です。 歴史は教訓を与える。もしくは歴史上の登場人物や、ある特殊な事件は、その次に起こる事件になにかしら影響を与えていると。一つの事件の経過が、次のある個別の事件に影響を与える。当事者が、ある過去の記憶に縛られて行動する。(p62) とあり、カーが挙げているケースとしてロシア革命後の状況を説明しています。 フランス革命がナポレオンと言う戦争の天才・軍事的なリーダーシップを持ったカリスマの登場によって変質した結果、ヨーロッパが長い間、戦争状態になったとボリシェビキの人たちは考えた。 レーニンの後継者問題が出てきた時、ボリシェビキの人たちはナポレオンのような軍事的カリスマを選んでしまうと、革命が変質してしまう。 よって軍事的なカリスマ性を持っていたトロツキーではなくスターリンを選んだ。 しかしスターリンと言う指導者を選んだ結果がどんなに悲惨なものになったのは周知の事実です。 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉もありますが、賢く経験から学んだつもりでも失敗する危険性をはらんでいる訳ですね。
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高校生からわかる「資本論」
この本の出版は09年。 08年にリーマンショックが起こり、年越し派遣村が話題になった時に「マルクスが資本論で書いたことが実際に起こっているでしょ」と言うスタンスによって書かれています。 しかしながらそれから時代が経って安倍政権が「労働規制の緩和」「労働市場の流動化」「円滑な労働力移動の実現」を掲げている「今」にこそむしろ読む意味があるのだと思います。 また人間の雇用を機械(ロボット)+IT(コンピューター)がどんどん奪っていく世界が来る直前かもしれない「今」にこそ読む意味があるのだと思います。 マルクスが生きた時代は資本主義が発展してどんどん労働者の労働条件は悪くなった。 しかしそれが過ぎると革命が起こる。 これがマルクスの理論。 そして実際にロシア革命が起こり、皇帝一族や金持ちが惨殺されていく。 これはヤバいという事で他の国々は福祉国家をつくった。 しかしソ連を中心とした社会主義国の崩壊によって西側陣営(日本も当然に含みます)福祉国家を捨てる。 「資本主義が勝ったのは市場の力を生かすことができたから」だと考えた。 しかし「新自由主義」を推し進めたらマルクスの時代に戻っているではないかと。 これが「資本論」に入る前の池上「前段階」解説。 マルクスは資本主義が発達した結果革命が起こると「予測」しましたが、実際に革命が最初に起きたのは資本主義があまり発展していない「ロシア」で予想は大外れ。 またマルクスは革命がおこって労働者の天国(地上の楽園?)が来るところまでは書きましたが、具体的にはどうすればいいのかは書かなかった。 「予測」が外れたことと「革命後の具体策」がなかったことは致命的にポンコツだったのかもしれませんが、マルクスが「資本論」で見せた「資本主義」の分析は当たっているのではないかとも考えられる訳です。 当たっているのか当たっていないのかを知るために「今」この本を読むことをお勧めします。 「当たってない」と判断する事になっても、それはそれで意味があるのだと思います
2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」
結論から言えばこの本は読んでおいた方がいいと思います。 そもそも複数の予測があり、その予測通りに2030年になっているのかどうかは分かりません。 でもこの予測からどの程度ずれているのか、ずれているとすればなぜずれているのかを考えることは非常に有益だと思うからです。 つまりこの本の予測を基準(ベンチマーク)にすればいいと思います。
マネー避難
基本的には今まで藤巻健史氏が述べてきたスタンス(前「日本破綻」シリーズ2冊)と変わっていない。 今まで藤巻氏は財政破たんによるトリプル安(円・国債・株)を述べてきたけど、震災が起きたことにより、さらにまずい状況になったと言うのがこの本の趣旨のようです。(2011年6月初版 あとがきの日付は2011年5月) 藤巻氏の言葉を借りれば「この震災が起きたことにより、財政破綻の時期が早まるだけでなく、その谷が一層深くなり、より長く最悪の経済状況が続くと思うようになったのです」(p5) 簡単に言えば次のような趣旨です。 元々財政破綻寸前でやばい状況+震災→元々起こる可能性があった円・国債・株のトリプル安が早く深くやってくると言う激マジやばい状況→超インフレで銀行預金は紙くず(同然に)→外貨分散投資をすべし(今は攻めの投資ではなく守りの投資へ) 以前の考えとの変更点があるとすればたとえば「円・国債・株」のトリプル安が起こる契機が「国債の未達」(国債の買い手がつかない)であるとの考えだったのが、その可能性を残しつつじわじわと底なし沼のようにトリプル安になるかもしれないと指摘している点です。 他には「国債の日銀引き受け」をほぼやらざるを得ないだろうと予測していることです。 では「具体的にどうすればいいのか?」と言うと分散なので1国に集中させないという前提のもと「少しリスクを取りたければ海外の株式・株式投資信託・REIT、リスクの嫌いな場合はMMF」を勧めています。期間が長い債券は世界的にインフレが来るとの理由で遠慮するそうです。 ちなみに藤巻氏のアメリカびいきは変わっていません。 「BRICSへの投資も悪くないですが、まずは米国への投資を増やした後だと個人的には思います」(p142)とあり約2ページにわたって「ドルは基軸通貨であり続ける」と書いています。 日本人で言えば大前健一氏は「私の足が完全にアメリカから遠ざかってしまった」とおっしゃっています。(「お金の流れが変わった!」まえがきより) リーマンショックでボロ儲けして名を馳せたジョン・ポールソン氏は09年夏時点でドル暴落を見込んでいるそうです。(「史上最大のボロ儲け」より) はてさてアメリカ(ドル)についてどちらの予想が当たるかどうか。
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く
恒常的とすら思える不景気状態。(いざなぎ景気超えの時もほとんどの人が豊かさを実感できませんでしたよね?) 失われた10年が20年となり、もはやエンドレスとなっていって失われているのが通常であるのではないのかとすら思える日本経済。 この本では日本における不況の恒常化の理由を「人口の変動」に求めています。 世間で言うところの少子高齢化ということになるのでしょうが、著者によると違うそうです。 大事なのは「生産年齢人口の変動」。 しかしながら生産年齢人口という言い方もあまり良くないとのこと。 キチンと言えば「生産年齢人口」ではなく、「消費年齢人口」と言った方が良いとのこと。 生産という供給視点で見るのではく、消費という需要側に視点をシフトする。 経済専門家には当たり前なのかもしれませんが、経済ド素人人間は「名称」に引きずられてしまう面がありますので(少なくとも私はそう)、この指摘はまさにコペルニクス的大転換でした。 つまるところデフレの正体はこうなる。 働いて賃金を得て、得た賃金で消費をしてくれる人たち(=消費年齢人口)がどんどん減っている。よって内需が活気づかずデフレになる。 本来は高齢者がお金を使って欲しい所なのだが、病気などを(過度に?)心配して全く使ってくれない。 よってお金を使ってくれる人たちがどんどん減っているので日本はデフレから脱却できない。 経済ど素人の私にはかなり納得できる理論です。 勿論、色々な物の見方があるし、経済を一面的に見れば解決できない事も承知しています。 この本では消費への影響として「賃金」を重視している訳ですが、株式価格などの金融資産を重視する考え方もあり得ますし。(「資産効果」というやつですね) それでもこの本の論理はかなりの説得力があると思います。 少なくとも経済ど素人の私には説得力がありました。 amazonのレビューやコメントでは喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が行われているようです。 個々の議論については私にはレベルが高すぎてついていけません。 しかしながら従来の経済学からこの本を批判するのであれば、従来の経済学が失われた20年を放置したままの結果になり、これからの日本の経済に大きな希望を与えてくれない現実をどうにかしてほしいと、経済関係に身を置かない人間としては切に思います。
それでも、日本人は「戦争」を選んだ
日本近現代史を専攻されている東大教授の先生が高校生・中学生へ行った授業を収録。 歴史部にいるような学生さんとは言え質問の内容が高度です。 少なくとも私が高校生の時よりは知的レベルが高い。 本の内容とは直接関係ないけど、まず学生さんのレベルの高さに脱帽。 主に日清戦争~第2次世界大戦終戦までの日本のことを述べています。 学者先生なので様々な資料(最近見つかった資料・研究成果を含む)からの引用も多いです。 この点を不満と捉えるか、学者先生と話と言うのはそういうものだと捉えるか、面白いと捉えるかは評価が分かれるかもしれません。 私は面白いと感じました。 例えば日露戦争の時、従来は政府内で元老・伊藤博文以外全員戦争賛成だったという風に思われていたけど元老・山縣有朋も反対だったことが分かったそうです。(NHK総合「坂の上の雲」では伊藤だけが最後まで反対と描かれていました) また第二次世界大戦末期民需関連の株が上がっていたそうです。 そんなときに株式市場があったのも驚きですが、投資家の中にはきちんと終戦を読んでいた人がいたんですね。「やるな、日本人」という感じです。 しかし私が最も印象的だったのはイギリスのE・H・カーと言う歴史家に関するお話です。 歴史は教訓を与える。もしくは歴史上の登場人物や、ある特殊な事件は、その次に起こる事件になにかしら影響を与えていると。一つの事件の経過が、次のある個別の事件に影響を与える。当事者が、ある過去の記憶に縛られて行動する。(p62) とあり、カーが挙げているケースとしてロシア革命後の状況を説明しています。 フランス革命がナポレオンと言う戦争の天才・軍事的なリーダーシップを持ったカリスマの登場によって変質した結果、ヨーロッパが長い間、戦争状態になったとボリシェビキの人たちは考えた。 レーニンの後継者問題が出てきた時、ボリシェビキの人たちはナポレオンのような軍事的カリスマを選んでしまうと、革命が変質してしまう。 よって軍事的なカリスマ性を持っていたトロツキーではなくスターリンを選んだ。 しかしスターリンと言う指導者を選んだ結果がどんなに悲惨なものになったのは周知の事実です。 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉もありますが、賢く経験から学んだつもりでも失敗する危険性をはらんでいる訳ですね。