「アウトサイダー」のような文芸評論を書いて新実存主義を主張するときも、「殺人事件集」や「オカルト」のような本を書いているときも、あるいは本書のような小説においても、コリンウイルソンの本質は、無神論的かつ生命主義的(進化論的)な神秘主義者であることにある。この本でもフィクションであることに気を許して、かなりまじめに以前から主張している神秘主義的自説を書き込んでいる。彼の神秘主義に共鳴するか、彼を単なる超常現象ビリーバーと片付けるか、でこの本の評価は、大きく異なるだろう。とりあえず言えることは、彼の小説のなかでは最も完成度が高く読みやすいということだ。
理論経済学の大きな欠陥は、市場経済が”ひとつの制度”であるという視点を有していないことでしょう。これは現代の代表的な経済理論をいくら使っても経済史を分析するための理論を構築するどころか、経済史の分析すら出来ないことを意味します。著者は、新制度派経済学の分析ツールを使って「経済史の理論」を構築しようとしています。J.Rヒックス以来の試みで、おそらくヒックスより成功していると思います。 このアプローチに従って経済史の研究が進めば、理論経済学に新しい光を当てることも可能になるのではないでしょうか。経済学を志すものが精読すべき一冊、著者は1993年にノーベル経済学賞を受賞しています。
太平洋戦争という戦争がどのように戦われたのか、日本軍(陸軍、海軍)は戦略的な視点は不足していたとよく言われるが、それは具体的にどのようなことだったのか、基本的なことを知るためには基本的な文献でしょう。 日本軍がいかに情報を軽視したかを示す「大本営参謀の情報戦記」(画像参照)ともに必読書だと思います。
気鋭の若手学者があるインテリジェンスの本で、日本の情報機関の能力はむしろ優れていた。作戦立案の際、現場のやる気、あるいは指揮官の士気を尊重する称し、客観的情報を無視し、希望的観測に頼る傾向に最大の問題があったと指摘している。 この本は、太平洋戦争で情報参謀として活動していた人の手になるもので、内容は上記の学者の主張を完全に裏づけている。学者の研究も重要だが、こういう人の手になる本は、臨場感という点でひと味違っている。 読んでいて怒りが込み上げてくるとともに、客観的情報を無視し、希望的観測に頼る傾向は現在の日本企業にも見られることに気付かされ愕然とさせられる。 この問題をクリヤーしない限り、戦略をいくら語っても意味がない。
冒頭にアンドレ・モロワの「英国史」からの抜粋が記載されている。この程度の予備知識では少しきついのではないかと思うが参考にはなる。テーマは、リチャード三世は、本当に王になるために正当な跡取りである甥を殺したのか?である。良質の歴史ミステリーの良さは再読に耐えることだ。その魅力が、証拠(史料)の押さえ方とそれをベースにした推理の面白さにあるからだ。そういう意味で、京都上京の阿弥陀寺(青玉上人)にまつわる(史実とは言い難い)伝説を元に勝手な妄想を繰り広げた「信長の棺」なんか歴史ミステリーと名乗る資格は絶対にない。「信長の棺」の作者は、この本を熟読して歴史ミステリーのなんたるかを学ぶべきだろう。
期間限定の特別価格でプレミアムサービスを体験
あなたのビジネスを次のレベルへ
© Copyright 2025, All Rights Reserved
賢者の石
「アウトサイダー」のような文芸評論を書いて新実存主義を主張するときも、「殺人事件集」や「オカルト」のような本を書いているときも、あるいは本書のような小説においても、コリンウイルソンの本質は、無神論的かつ生命主義的(進化論的)な神秘主義者であることにある。この本でもフィクションであることに気を許して、かなりまじめに以前から主張している神秘主義的自説を書き込んでいる。彼の神秘主義に共鳴するか、彼を単なる超常現象ビリーバーと片付けるか、でこの本の評価は、大きく異なるだろう。とりあえず言えることは、彼の小説のなかでは最も完成度が高く読みやすいということだ。
制度・制度変化・経済成果
理論経済学の大きな欠陥は、市場経済が”ひとつの制度”であるという視点を有していないことでしょう。これは現代の代表的な経済理論をいくら使っても経済史を分析するための理論を構築するどころか、経済史の分析すら出来ないことを意味します。著者は、新制度派経済学の分析ツールを使って「経済史の理論」を構築しようとしています。J.Rヒックス以来の試みで、おそらくヒックスより成功していると思います。 このアプローチに従って経済史の研究が進めば、理論経済学に新しい光を当てることも可能になるのではないでしょうか。経済学を志すものが精読すべき一冊、著者は1993年にノーベル経済学賞を受賞しています。
太平洋戦争(上)
太平洋戦争という戦争がどのように戦われたのか、日本軍(陸軍、海軍)は戦略的な視点は不足していたとよく言われるが、それは具体的にどのようなことだったのか、基本的なことを知るためには基本的な文献でしょう。 日本軍がいかに情報を軽視したかを示す「大本営参謀の情報戦記」(画像参照)ともに必読書だと思います。
情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記
気鋭の若手学者があるインテリジェンスの本で、日本の情報機関の能力はむしろ優れていた。作戦立案の際、現場のやる気、あるいは指揮官の士気を尊重する称し、客観的情報を無視し、希望的観測に頼る傾向に最大の問題があったと指摘している。 この本は、太平洋戦争で情報参謀として活動していた人の手になるもので、内容は上記の学者の主張を完全に裏づけている。学者の研究も重要だが、こういう人の手になる本は、臨場感という点でひと味違っている。 読んでいて怒りが込み上げてくるとともに、客観的情報を無視し、希望的観測に頼る傾向は現在の日本企業にも見られることに気付かされ愕然とさせられる。 この問題をクリヤーしない限り、戦略をいくら語っても意味がない。
時の娘
冒頭にアンドレ・モロワの「英国史」からの抜粋が記載されている。この程度の予備知識では少しきついのではないかと思うが参考にはなる。テーマは、リチャード三世は、本当に王になるために正当な跡取りである甥を殺したのか?である。良質の歴史ミステリーの良さは再読に耐えることだ。その魅力が、証拠(史料)の押さえ方とそれをベースにした推理の面白さにあるからだ。そういう意味で、京都上京の阿弥陀寺(青玉上人)にまつわる(史実とは言い難い)伝説を元に勝手な妄想を繰り広げた「信長の棺」なんか歴史ミステリーと名乗る資格は絶対にない。「信長の棺」の作者は、この本を熟読して歴史ミステリーのなんたるかを学ぶべきだろう。