最初はとにかく美しい文章に目が眩んで、至福の一時を味わっていましたが、読み進んで行くと次第にそうはいかなくなり、甲野さんや小野君に同情したり共感したり、宗近君の存在が眩しく感じられたりと落ち着かず。 一時も気が抜けない小説でした。 特に会話の緊張感の表現が凄い。ちょっと気を抜くと置いて行かれてしまう。 現実世界でこんなに緊張感のある会話はまずない。 それが面白いのだけれど。 ラストの辺り、宗近君が妹と甲野さんを説得する場面は何故か泣けた。 人前だったので、文字通り涙を流したわけではないけれど、久しく感じたことのない感動を味わった。 これは著者の代表作ではないのかも知れないけれど、それでもとても素晴らしい作品でした。 「草枕」と同じく、これも何度か読み返すことになると思います。
いやー、もうホント凄いとしか言い様がないです。 解説には、これはこの後の作品の習作であるとありますが、それどころではないと思う。 並みの作家の傑作レベルだと感じました。 「二百十日」はあまりに短いので、確かに習作という感じはありますが、世間に対する漱石の所信表明というか、対決姿勢というか、兎に角短いながらも熱い作品です。 「野分」は、ホントに文句なく素晴らしい。 クライマックスの道也先生の演説には鳥肌が立ちました。 訳の分からん占い紛いより、よっぽど生き方の指標を明確に提示していると思う。 ただそれだけでは説教臭くなるところですが、「猫」で見られたようなユーモアや「草枕」的な美的描写が間に入るので、読んでいるうちに自然と漱石の考えに触れられます。 この匙加減が見事。
少しまえにフィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読んで以来、いままで手付かずだったSFも少しずつ読むようになったのですが、なにしろ膨大な作品があるので、とりあえず誰もが薦める名作からはじめることにしました。 最初に読もうと思った数冊のなかに、この作品もあったのですが何故かどの書店にもない。 ということで仕方なく、他の作品たちを読んでいるうちに新装版がでました。それで納得。 あくまで個人的な感想ですが、この作品が語っているのは 「過去も現在も未来も自由意志なんて実は存在しないのかも知れないけれど、だからこそやりたいようにやれば良いんじゃないの?」 というようなことではないかと思います。 個人的にこういう考え方はカフカとかカミュに通ずる部分があるんじゃないかなぁ、と感じました。 目新しい思想には出会えなかったですが、SFというジャンルの懐の深さを感じました。
この小説の一番の魅力は登場人物たちの饒舌な語りと、それを飽きずに読ませる歯切れの文体にあることは疑いようがありません。 エンタメ小説としても十分楽しめる作品だと思います。 が、作品の核は当然それだけではありません。 章が進むにしたがい、次第に会話は深く深く深くなっていきます。 そして終いには漠然とした、不気味とも言える不安を残して終わります。 それでも僕はこの作品が大好きです。 また一人好きな作家が増えました。 この世界に、かつてこんな作家が存在したのかと思うだけで幸せです。
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虞美人草
最初はとにかく美しい文章に目が眩んで、至福の一時を味わっていましたが、読み進んで行くと次第にそうはいかなくなり、甲野さんや小野君に同情したり共感したり、宗近君の存在が眩しく感じられたりと落ち着かず。 一時も気が抜けない小説でした。 特に会話の緊張感の表現が凄い。ちょっと気を抜くと置いて行かれてしまう。 現実世界でこんなに緊張感のある会話はまずない。 それが面白いのだけれど。 ラストの辺り、宗近君が妹と甲野さんを説得する場面は何故か泣けた。 人前だったので、文字通り涙を流したわけではないけれど、久しく感じたことのない感動を味わった。 これは著者の代表作ではないのかも知れないけれど、それでもとても素晴らしい作品でした。 「草枕」と同じく、これも何度か読み返すことになると思います。
二百十日・野分
いやー、もうホント凄いとしか言い様がないです。 解説には、これはこの後の作品の習作であるとありますが、それどころではないと思う。 並みの作家の傑作レベルだと感じました。 「二百十日」はあまりに短いので、確かに習作という感じはありますが、世間に対する漱石の所信表明というか、対決姿勢というか、兎に角短いながらも熱い作品です。 「野分」は、ホントに文句なく素晴らしい。 クライマックスの道也先生の演説には鳥肌が立ちました。 訳の分からん占い紛いより、よっぽど生き方の指標を明確に提示していると思う。 ただそれだけでは説教臭くなるところですが、「猫」で見られたようなユーモアや「草枕」的な美的描写が間に入るので、読んでいるうちに自然と漱石の考えに触れられます。 この匙加減が見事。
タイタンの妖女
少しまえにフィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読んで以来、いままで手付かずだったSFも少しずつ読むようになったのですが、なにしろ膨大な作品があるので、とりあえず誰もが薦める名作からはじめることにしました。 最初に読もうと思った数冊のなかに、この作品もあったのですが何故かどの書店にもない。 ということで仕方なく、他の作品たちを読んでいるうちに新装版がでました。それで納得。 あくまで個人的な感想ですが、この作品が語っているのは 「過去も現在も未来も自由意志なんて実は存在しないのかも知れないけれど、だからこそやりたいようにやれば良いんじゃないの?」 というようなことではないかと思います。 個人的にこういう考え方はカフカとかカミュに通ずる部分があるんじゃないかなぁ、と感じました。 目新しい思想には出会えなかったですが、SFというジャンルの懐の深さを感じました。
吾輩は猫である
この小説の一番の魅力は登場人物たちの饒舌な語りと、それを飽きずに読ませる歯切れの文体にあることは疑いようがありません。 エンタメ小説としても十分楽しめる作品だと思います。 が、作品の核は当然それだけではありません。 章が進むにしたがい、次第に会話は深く深く深くなっていきます。 そして終いには漠然とした、不気味とも言える不安を残して終わります。 それでも僕はこの作品が大好きです。 また一人好きな作家が増えました。 この世界に、かつてこんな作家が存在したのかと思うだけで幸せです。