約9500年前に家畜化され、文明の伝播とともに世界中に広がったネコ。 人を魅了してやまない彼らの存在は、鳥類や哺乳類をはじめとする生物群にどのような影響をもたらすのか。 捕食による希少種の絶滅や、人や海棲哺乳類への病気の媒介、TNR(捕獲・不妊去勢・再放逐)の有効性など、野放しネコと環境との関わりを科学的に検証するとともに、各国で行われている対応策とその効果を紹介する。 ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)、 ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス、 フォーブス誌ベストブック・トップ10(2016年、保全と環境)大絶賛!
レビュー(13件)
ほのぼのとしたドキュメンタリー要素はないです。 日本で言うところの野良猫、外飼い猫、地域猫が生態系、野生生物や人間に及ぼしている影響について科学的検証に基づいて書かれた非常に平易な論文的な内容です。 多分本書の主張によると「偏った」愛護精神で活動している方からしたら 正誤別として揚げ足取り放題な内容ですが 現実問題として日本でも固有のヤマネコ、うさぎ、ネズミ等が野良猫によって絶滅の危機に晒されている事実を思い出しました。 個人的には家猫はハーネスつけての散歩もすべきではないと思っています。 外飼いや、「餌がないと生きていけないから」と言う自己正当化のエクスキューズでの無責任な餌やりもすべきではないです。 動物の愛護、保護にについて責任のある継続的な行動をしていない人の声ばかりが大きく響き さらにそれが好意的に捉えられているのは不可解な事実です。 TNRに関して何か参考になる記述を期待したら大きく裏切られます。 かなり昔からあるCAのサンクチュアリのようなものが最も理想的なのですが日本においての実現は非常に難しいと思います。 地域猫の概念が自治体レベルで拡散されている日本の現状をこの本の著者はどう判断するか、と考えるとお気の毒にとすら思います。 文章に関しては、翻訳特有の回りくどい言い回しが多用され 日本の文化的背景や習慣を意識した表現ではないので 決して読みやすいものではありません。
これは傑作感のある"不都合な真実"
親しくさせてもらっている人物からプッシュされた為、中古本が安くなってから購入しようと考えていたが、押しが強くなってきたことと、予想外のポイント収入が入ってきた為、購入。 まずは原書を翻訳した方々に敬意を払いたい。 大体の場合、学者の書いた分析本の原書は我々ネイティブではないものには読み辛いものなのだが、本書は非常に解りやすい文体で読み易く纏められており、縦書き文章に目を通すのが苦手な私が、読破と理解に1時間半を要しなかった。 つまり誰でも簡単に読める内容になっている。 要は”猫の無責任飼育が引き起こすリスク”を、過去のデータに基いて科学的に分析してロジックを説き、具体的な事例を列挙している内容なのだが、 加えて、そのような論拠や視点を無視し、ただ感情論と自己の価値観で保守的に動物愛護を謳う、頭の悪い猫愛誤家に真の責任があることを断じている点に於いて痛快である。 動物愛護には教養に基いた分別が必要であるが、動物愛誤へのハードルは低い。 頭が悪くとも教養が無くとも、子供並みに感情を振り回すことが出来れば誰でも愛誤家には成り得る 。 そしてそれが、多数を占めるそのような者達にとっての自己満足と承認欲求を満たす入り口となっている。 救いようが無い連中にとっての救いとでも言うべきか。 (先の見通せる者にとってはオチが付くことが解りきってる福音など無くても良いと個人的には思うのだが…)。 何はともあれ多数の愚者が感情論を振り回し、大声を挙げているのが昨今の迷走する動物愛護の実情である。 そしてそれが結果的に猫を苦しめる結果になることを本書がその内容で示しているのも皮肉が利いていて面白い。 "何故そうなるのか"と"過去の事例に基いた解決方法の提案"が論理的に分かり易く説明されているので、この手の問題に興味がある人は是非手にとって欲しい。 取分け、第七章「TNRは好まれるがなにも解決しない」と「致死的排除法と生物多様性への投資」は個人的に必読の箇所であると思う。