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弱小城主から元祖「日の沈まぬ帝国」の皇帝へ。広大な版図と多種多様な民族を支配下に置き、千年の命脈を保った世界史上ユニークな「帝国」。奇人皇帝ルードルフ二世から悲劇の皇妃エリーザベトまで。音楽の都、世紀末芸術の都としてのウィーンから、サラエヴォの銃声に始まり、敗戦と帝国瓦解で終わった第一次世界大戦まで。様々な人物とエピソードに彩られた歴史を一冊の新書ですべて描く。 1273年、ドイツ南西部の雄として知られたルードルフ四世が、ドイツ王に選出されます。各国の相反する利害関係からの、「より悪くない選択」としての選出でした。しかしこの偶然が、その後の「ハプスブルク帝国」大発展の基礎となりました。 ヨーロッパ列強との婚姻関係がもたらした偶然も幸いして、帝国の版図は拡大の一途をたどります。なかでもスペインを領有したことで、その領土は中南米そしてアジアにも及ぶ広大なものとなり、「日の沈むところなき帝国」とまで呼び習わされるに至りました。19世紀のイギリスではなく、この時期のハプスブルク帝国こそが、元祖「日の沈むところなき帝国」だったのです。 その後も二度にわたるオスマン帝国のウィーン包囲の脅威をはねのけ、オスマンからの失地回復にも成功するなど、ヨーロッパの大国としての地位は維持されます。しかし19世紀になると徐々にフランス、イギリスなどのより「近代的」な国々の後塵を拝するようになります。そして自国の皇位継承者暗殺を発端として勃発した第一次世界大戦での敗北により、ついに終焉の瞬間を迎えます。 本書は、現在のオーストリア、ハンガリー、チェコ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどに相当する地域を中心とする広大な版図と、そこに住まう多種多様な民族を支配下に置き、曲がりながりにも1000年の命脈を保った世界史上にもユニークな「帝国」の歴史を一冊の新書で描ききった意欲作です。 はじめに 第一章 勃興 第二章 オーストリアの地で 第三章 「さらに彼方へ」 第四章 「ドナウ君主国」の生成 第五章 主権国家体制の下で 第六章 「何事も人民のために、何事も人民によらず」 第七章 秩序と自由 第八章 「みな一致して」 第九章 ハプスブルク神話 あとがき
レビュー(20件)
1000年の歴史をよくまとめられています
夫が購入し、読み終えたので読んでみました。 ハプスブルク帝国の歴史1000年を王家の歴史、経済、文化、外国との抗争等々をまとめ力作です。 それでもまだもっと知りたい気がして、読み足りない気がします。 でも、これ1冊でハプスブルク家の発祥から現在までを知る事が出来ます。
中世近現代の欧州歴史の大観がわかる
高校大学で勉強したヨーロッパ史が、ハプスブルク家という家系を通して、どのように変遷したのかがまとめられている。あらためて現在のヨーロッパの姿がどうしてこのような状況になっているのかが、再確認できる。多少、表現は硬いところもあるが、ボリュームのある内容が簡潔に整理されている教科書といえる。
同じ講談社現代新書から出版された『神聖ローマ帝国』や『ハプスブルク家』で復習してから本書に挑戦しました。 先の二作品はもう何十年も前の作品ですが、それと比べて何がどう新しくなっているのかもわからないまま読了。 近代国家の枠組みに縛られた現代人には中世国家の姿を理解するのは相当な難題だと思いました。