ネタバレあり

発想、構成、オリジナリティー、そして読ませる力に関しては文句のつけようもない。100点満点で200点をつけたい。 初投稿時、某SF巨匠により「虐殺器官をより具体的に描写してほしい」やらなんやら指摘され、受賞とならなかったようだが、私はそうは思わない。 本誌に登場する「虐殺器官」は、潜在意識に関わるというその性格上、具体化すればするほど、おそらくその効力を減ずるからだ。 リアリティに富む精緻な描写と筆力で一気に引き込まれ、読後もある種爽快だ。 しかし、読後、改めて内容を咀嚼すると、大きな穴が二つほどみえる。 1)暗殺を旨とする狙撃者が、身柄を捕獲された後、敵や標的とあそこまでべらべらしゃべることはありえない。「標的がしていることは、結局狙撃者が薬物やカウンセリングで受ける(脳)感覚のマスキングと同じことである」という点を対比させたかったのであろうが、狙撃者が、そのような処置を受ける戦闘員であればあるほど、標的とここまで親密に「激論」することはありえない。 2)同様の理由で、狙撃者がその任務を損なうほど単一の女性に傾倒することはない。主役のような高度な暗殺者は、狙撃者同士、もしくは機関によって監視・コントロールされているはずである。 上記に点ほど、物語の進行上、不可欠な要素であることは理解する。それだけにますますこれらの穴の大きさを意識せずにはいられなかった。