長編だが飽きない

ネタばれするといけないので筋には触れませんが、 読者はごく日常的な滑り出しから急に突拍子もない世界に巻きこまれ、さらには心象風景的な幻想世界へと案内されます。主要なキャラクターが皆、中性的で淡泊で「キャラが薄い」のに、かえってそのことによって物語が深みを増しています。天体望遠鏡と電子顕微鏡のふたつをかわるがわるに覗いたかのようなとっても不思議な味わい深い作品でした。 原作を書いた映画のヒットなどで、「少女」「英国流スローライフ」「売れっ子児童文学者」的なイメージが着いている著者ですが、本作品ではキャラクターも(読者層も)ぐっと年齢が上がっています。そして成功しています。『からくりからくさ』では年齢設定の割に幼く身勝手で物知らずな行動をとる主人公達にいらいらさせられ、「守宮奇譚」では無理して中年男を造形している感じを受けましたが、本作品は見事に成功していると思います。