大変な労力の成果として、現代に蘇った「晩年の勝海舟の談話」が或る程度読み易い形で纏まった一冊である本書は、なかなかに興味深かった。
本書に在る談話の話題は、多分最も多いのが、談話が出た時期の政治、外交等に関する私見のようなモノだ。そして同時代や過去の人物評、文芸等に関する事、加えて自身の来歴に纏わる話題であろう。『氷川清話』と言えば、「晩年の勝海舟の回想」というイメージも強いように思うが、実は「識者」と見做された彼が“時局”に関連するコメントをしているという部分の方が寧ろ多い。
勝海舟については、小説や映画やドラマの劇中人物のモデルになる頻度も高めで、色々と毀誉褒貶の在る人物であるとは思う。が、本書を読んで思うのは「俺は、俺が出来るように、俺が可能な限りに何事にも力を尽くした」、「武士の端くれとして、武士なりの鍛錬を重ねて青年期を過ごし、誰にも恥じることがないように生きて来た」というような矜持を胸に、「とりあえず、現在となっては一線を退いている者で、自身が何かを言ってどうなるでもないだろうが、こういうように思う」と世の中を達観して悠然としている彼の姿である。
本書の本文には「敢えて話口調のような文」で綴っている箇所も多い。そういう部分を読むと、東京に在った学生時代に出くわした、一定以上の年配の方、殊に男性の「多分、“江戸”の流れを汲むような話し口調?」と感じたような声音が頭の中に浮かび上がる…本書を読んでいて、何か自身も老境の勝海舟の居る場所を訪ねて話しに耳を傾けている気分になる。
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