分子生物学最前線からの問いかけ

「人は瞬時に、生物と無生物を見分けるけれど、それは生物の何を見ているのでしょうか。そもそも生命とは何か、皆さんは定義できますか?」という問いかけから本書は始まります。 生物と無生物を区別するもの、つまり生物・生命の本質とは何なのか。分子生物学者が生物学の視点から考察する一冊です。 本書の最大の特徴はその「文学性」です。もちろん、本書はフィクションではありませんし、取り組んでいるテーマもかなり高度なものです。 しかし、著者の学者とは思えない高い文章力が、本書を読みやすくとてもエキサイティングな一冊に仕上げています。特別な知識は必要ありません。あっという間に生命の世界に引き込まれます。そして、考えさせられます。 本書の最後を著者は次のように結んでいます。 「これ(動的平衡)を乱すような操作的な介入を行えば、動的平衡は取り返しのつかないダメージを受ける。もし平衡状態が表向き大きく変化しないように見えても、それはこの動的な仕組みが滑らかで、やわらかいがゆえに、操作を一時的に吸収したからにすぎない。そこでは何かが変形され、何かが損なわれている。(後略)」 「私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはないのである。(後略)」 遺伝子操作が日常化しつつある現代。それが生命にもたらす意味を、我々一人一人が真剣に考えなければならない時期にきているようです。そのための思考を助けてくれる貴重な良書です。