大いなる肩透かし

上巻でこれでもかとばかりに撒き散らされた作中作の謎の解明、伏線の回収-- を当然ながら期待して読むわけですが、しばらくは作中作を執筆した作家の死に関わるストーリーに付き合わされます。 これは好き嫌いが分かれるのではないかな。私自身は、もうおなかいっぱいという感覚になります。 そして、いよいよ全ての謎が解かれ、いちいちの小ネタがつなげられていくことになるものの、その「真実・事実」(その全体像)に至る「思考と説明」が説得力に欠けます。 ~だったに違いない、~としか考えようがない、という証明法はよほど論理学的に隙なく使わないと、フェアな謎解きにならないでしょう。 作家の死の問題も、原稿を利用したトリック一点だのみ。この長編を一手に引き受けるほどのトリックではないだけに、残念です。 原稿を読んだせいで人生が変わった、という上巻冒頭の主人公の大仰な前ふりも、結論と照らし合わせると普遍性のないものだったと分かります。 探偵の名前に込められたギミックなど、次元が低く、悪趣味で、まさに蛇足。 盗用された作品とオリジナル原稿の読み比べは、ストーリー全体から見て本当に必要だったのか疑問です。 クリスティへのオマージュかぁ。まあそうかもしれない。 ミステリを標榜せず、謎をはらんだエンターテインメント小説と銘うって、なおかつ無駄をそぎ落として仕上げられていれば、違う意味で楽しめたかもしれません。