幕末に最も過激な行動を起こしたのは長州でも薩摩でもなく、水戸の尊攘派である。井伊直弼の首を獲った桜田門外の変はもちろんのこと、本作で描かれる天狗党の挙兵はその最たる出来事と言える。幕府に攘夷決行を迫るため、彼らは京都にいる水戸出身の徳川慶喜に志を訴えに行くが、その慶喜に追討され、揚句には見放され、総勢352人の斬首という最悪の結末を迎えることになる。果たして彼らは無駄死にだったのか。しかし、この幕府の前代未聞の残虐行為が薩摩をはじめ国内諸氏の討幕意識を一気に高めたことは間違いない。個人的には、水戸藩内の尊攘派と門閥派の抗争にも大いに興味を持った。吉村昭氏の作品はいつものことながら、小説というよりは時事記であり、残念ながら面白い読み物ではない。
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