強大な武田と北条の侵攻に脅かされる上州の地。その地を、誇りを持って死守せんと迎撃する上州の武者魂。本作は、神出鬼没の老獪な戦術を駆使し、生涯にわたって信玄に徹底抗戦した老将・長野業政の痛快戦記である。色香漂う女素っ破の風花をアクセントに、業政の好色ぶりも物語に艶を与えている。読みやすく、戦国上州の一端を知る好作品です。
幕末に最も過激な行動を起こしたのは長州でも薩摩でもなく、水戸の尊攘派である。井伊直弼の首を獲った桜田門外の変はもちろんのこと、本作で描かれる天狗党の挙兵はその最たる出来事と言える。幕府に攘夷決行を迫るため、彼らは京都にいる水戸出身の徳川慶喜に志を訴えに行くが、その慶喜に追討され、揚句には見放され、総勢352人の斬首という最悪の結末を迎えることになる。果たして彼らは無駄死にだったのか。しかし、この幕府の前代未聞の残虐行為が薩摩をはじめ国内諸氏の討幕意識を一気に高めたことは間違いない。個人的には、水戸藩内の尊攘派と門閥派の抗争にも大いに興味を持った。吉村昭氏の作品はいつものことながら、小説というよりは時事記であり、残念ながら面白い読み物ではない。
本作は、九州高鍋家から上杉家の養子となり、第9代米沢藩主の座に就いた上杉治憲を主人公に、米沢藩の藩政改革と財政再建を主題にした物語である。当時、日本で最悪の財政状況にあった東北の小藩を、領民への愛を基本に、身分にとらわれない優秀な人材の登用、積極的な地場産業の振興等の大胆な改革により見事に復興させた奇跡の物語である。苦境の米沢藩を舞台にしているが、実は作者は、現代に生きるすべての組織人に、リーダーシップとはこうあるべきだ、、と辛辣に教育を行っている。多くの人に読んでもらいたい作品。
最終巻である山の巻は、信玄の西上の志を中心軸に、家康との決戦となる三方ケ原の合戦を丹念に描いた壮大な作品になっている。非常に面白い内容だとは思うけど、ここまで長々と書き連ねる必要があったか、少々疑問が残る。「火」「山」を合わせて半分のボリュームで十分だったし、後半は読書の興味も読むスピードもだれてしまった。でも、信玄ファンは必読です。
信濃を手中に収めた信玄は、ついに駿河侵攻を目指す。これに抵抗する義信との亀裂はどこまでも深く、ついに謀反を企てた末に、義信は廃嫡~幽閉~死へと向かった。将来の武田家の衰退はこの時点で始まっていたと推測できるが、四男・勝頼、甥の信豊らの成長もあって北条軍を三増峠で散々に打ち破り、まずは駿河、そして京都へ西上すべく武田の快進撃が続く。
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業政駈ける
強大な武田と北条の侵攻に脅かされる上州の地。その地を、誇りを持って死守せんと迎撃する上州の武者魂。本作は、神出鬼没の老獪な戦術を駆使し、生涯にわたって信玄に徹底抗戦した老将・長野業政の痛快戦記である。色香漂う女素っ破の風花をアクセントに、業政の好色ぶりも物語に艶を与えている。読みやすく、戦国上州の一端を知る好作品です。
天狗争乱
幕末に最も過激な行動を起こしたのは長州でも薩摩でもなく、水戸の尊攘派である。井伊直弼の首を獲った桜田門外の変はもちろんのこと、本作で描かれる天狗党の挙兵はその最たる出来事と言える。幕府に攘夷決行を迫るため、彼らは京都にいる水戸出身の徳川慶喜に志を訴えに行くが、その慶喜に追討され、揚句には見放され、総勢352人の斬首という最悪の結末を迎えることになる。果たして彼らは無駄死にだったのか。しかし、この幕府の前代未聞の残虐行為が薩摩をはじめ国内諸氏の討幕意識を一気に高めたことは間違いない。個人的には、水戸藩内の尊攘派と門閥派の抗争にも大いに興味を持った。吉村昭氏の作品はいつものことながら、小説というよりは時事記であり、残念ながら面白い読み物ではない。
小説 上杉鷹山 全一冊
本作は、九州高鍋家から上杉家の養子となり、第9代米沢藩主の座に就いた上杉治憲を主人公に、米沢藩の藩政改革と財政再建を主題にした物語である。当時、日本で最悪の財政状況にあった東北の小藩を、領民への愛を基本に、身分にとらわれない優秀な人材の登用、積極的な地場産業の振興等の大胆な改革により見事に復興させた奇跡の物語である。苦境の米沢藩を舞台にしているが、実は作者は、現代に生きるすべての組織人に、リーダーシップとはこうあるべきだ、、と辛辣に教育を行っている。多くの人に読んでもらいたい作品。
武田信玄 山の巻
最終巻である山の巻は、信玄の西上の志を中心軸に、家康との決戦となる三方ケ原の合戦を丹念に描いた壮大な作品になっている。非常に面白い内容だとは思うけど、ここまで長々と書き連ねる必要があったか、少々疑問が残る。「火」「山」を合わせて半分のボリュームで十分だったし、後半は読書の興味も読むスピードもだれてしまった。でも、信玄ファンは必読です。
武田信玄 火の巻
信濃を手中に収めた信玄は、ついに駿河侵攻を目指す。これに抵抗する義信との亀裂はどこまでも深く、ついに謀反を企てた末に、義信は廃嫡~幽閉~死へと向かった。将来の武田家の衰退はこの時点で始まっていたと推測できるが、四男・勝頼、甥の信豊らの成長もあって北条軍を三増峠で散々に打ち破り、まずは駿河、そして京都へ西上すべく武田の快進撃が続く。