「違う世界へ出ちまうんじゃないか」と案ずる浩三少年。自らの影と会話できる彼だからこそ経験できた不思議な世界。時代は明治・大正だろうか。江戸言葉が残り、暗闇の中に異世界の入り口がぽっかり開いているような世界観が良かった。齣江やトメ婆さんは……逆神隠しと言えばよいだろうか? 全体的に美しい文体で、中でも「雨が、暮らしの音や生き物の気配を消していく」という表現が素晴らしいと思った。