世界神話学入門

黄泉比良坂を訪ねて島根を旅したとき、そういえばギリシア神話のオルフェウスの話と同じプロットだな、と感じ、本書を手に取った。著者は、海洋人類学および物質文化や言語文化の人類学的研究を専門としている後藤明さん。 2013年、ハーヴァード大学のマイケル・ヴィツェルが『世界神話の起源』の中で、世界中の神話はゴンドワナ型とローラシア型の2つに大別できるとした。本書は、その仮説を下敷きに、考察を進めてゆく。 第1章では人類の発祥まで時間軸を遡る。続く第2章では、旧石器時代の文化について考察する。文字の存在は確認されていないが、壁画などが残っており、後藤さんらの仮説が正しければ、世界神話に関する認識をあらためなくてはならない。 第3章では、世界中に見られるゴンドワナ型神話を紹介していく。そのなかで、人類が後期旧石器時代には天文に関心を抱いているとした上で、後藤さんは、「たとえばシベリアあるいはモンゴル付近から北米大陸にかけて、もっとも広範囲に見られるのが宇宙狩猟(コスミック・ハント)のモチーフである。この地域は緯度が高いため、北極星の周りを回って沈まない周極星が多い。日本の北海道の北部でも北斗七星は1年中沈まない。それでこれら沈まない星に対して、漁師や猟犬が獲物を永遠に追いかけている、という神話が付与された」(132ページ)と述べている。だとすると、星座に関わるギリシア神話は、ゴンドワナ型神話にルーツをもっていることになる。 第4章では、ローラシア型神話を紹介する。「ローラシア型神話にとっての究極的な問いは、世界と人間の起源はどのようなものだったのか」(146ページ)だという。世界の創造から、世界各地の神話には共通項が多い。「そしてローラシア型神話は、最終的な世界の破滅を語る黙示録をしばしば伝える」(180ページ)。 洪水神話も、世界各地に見られる。あのヴェリコフスキーの彗星(イマヌエル・ヴェリコフスキー『衝突する宇宙』)を持ち出すまでもなく、アフリカからユーラシア大陸を伝って南北アメリカ大陸に移動した人類によって、神話は伝搬したのかもしれない。だとしたら、洪水は1万2千年前の出来事ではなく、さらに上代に起きた海進を、人類の記憶として伝えているのかもしれない。 また、こうした神話の共通性を利用して、ナチスや戦前の大日本帝国は、自らの正当性を主張した。後藤さんは、「われわれは、