高野山開創1200年、出かける前に読もう

著者は高野山に生まれ育ち、現在は高野山真言宗管長を務める。高野山を語るのに、これほど適した人はいないだろう。高野山は明治に到るまで女人禁制だったので、そこで家族が暮すことはなかった。高野山で生まれ育った人間はまだ何世代もいないのである。本書は高野山を山岳仏教の拠点としてだけではなく、その歴史、四季折々の行事と風情、文化財など多面的に語っている。まさにそこで物心がつく前から生活してきた実感のようなものがあるのだろう。 高野山を語るのに空海を抜きに語ることはできない。しかし、本書では空海や仏教の教えについてはあまり紙幅を費やしていない。高野山は比叡山と比較して述べられることが多いが、比叡山が聖域と俗界を厳しく結界しているのに対し、高野山は聖と俗が混在しているという。高野山は宗派を問わず、武将や文化人、公家だけでなく、多くの庶民からも霊場信仰を集め菩提所を設けられてきた。時代の変化に伴い、高野山も交通が整備され、世界遺産にも登録され、外国からの訪問者も多いと言う。 高野山は長い時間をかけて多く人の平安への祈りが凝縮されており、大自然が人の世の争いや営みを包み込んで癒しの場を形成しているのであろう。開創1200年の大法会にはぜひ訪れてみるつもりだ。