“大学”で学ぶというような、身を立てる「流れ」から逸れ、私的に仏の道を収めようと方々を巡って修行をする活動に身を投じながら、仏教系の思想の「最終ランナー」のように現れた密教に着目し、唐に入って学ぶ機会を掴み、国際的な交流も多く経験し、帰国後は多くの人士と交わりながら文化活動や社会活動にも身を投じ、同時に自身の道を求めることも忘れなかったというのが空海だ…何か益々「凄い人物…」と思ってしまう。 本書は1967年頃に登場した一種の専門書が1993年に文庫本ということになり、そこから版が重ねられている。自身で入手したのは2018年の「第9刷」であった。或いは「空海の生涯や活動がもたらした事柄を知る」という趣旨、所謂「伝記」ということでは、既に“古典”となっているような一冊かもしれない。 本書は、御本人が書き記した様々なモノ、同時代や少し後の時代の様々な書物での言及というようなことに依拠し、「文献が語る過去の或る時期の人物や活動の様相を探る」という「非常に基礎に忠実」な方法で空海という人物の歩み、活動を明らかにし、その活動がもたらした様々な事柄をも同時代の著名人の事等も交えて語るという内容である。 「読書の歓び」というようなこととして「実際に会えるのでもない“人物”を知る」ということが挙げられるのではないかと思う。本書は間違いなく、自らを“沙門”と称した男、日本の文化史上で屈指の巨大な存在とも考え得る人物、「空海」と巡り会うことが叶う一冊だと思う。