2巻以降何度となく書物に耽溺する姿が描かれてきた最澄が、空海に「理趣釈経」の借用を申し出て断られるエピソードが登場する。唐から持ち帰ってきた書物を最澄に渡した事もある(8巻)空海が今回断ったのは、流れから見れば確かに違和感が否めない。だが、史実である。史実では、空海が「文章修行ではなく実践修行によって得られる」との見解を示して拒絶した事になっているが、本作では最澄最愛の弟子泰範を巡る三角関係の様相も示している。過去において空海が発した言葉を鑑みると、最澄の泰範に寄せる愛情と空海が最澄に寄せるそれとは異なるようだ。