モンゴルの観点からみたモンゴル帝国史

モンゴルを中国における「元朝」ではなく、モンゴルの観点からみたチンギス・カンとその末裔が築いた帝国の歴史物語である。著者は特にペルシャで編集された「集史」(イスタンブール・トプカプ宮殿博物館所蔵)を原典とそこから持論を展開している。本書下巻が扱うのは、クビライ政権から元朝の滅亡と帝国の解体までである。本書によれば、例えば、クビライによる日本侵攻(いわゆる元寇)は、第1次がデモンストレーション、第2次が南宋余剰人口の日本移住政策とされる。第1次は南宋侵攻と時期を一にしており、日本など眼中になかったこと、第2次は南宋滅亡後の旧南宋軍から動員した兵士(いわゆる江南軍)が最下級の兵士から構成され、船舶も旧型ばかり、指揮官もB・C級クラスであったことを挙げ、とても戦力とはいえない現状であったことを挙げる。なお、クビライは日本侵攻は2回で断念したが、高麗征服には実に40年以上の歳月をかけている。高校で学んだモンゴルの歴史とは違った観点からモンゴル帝国を再点検してみたい人にはお勧めだが、この本の筆者はモンゴル一辺倒で他の周辺諸国を卑下するような態度が感じられるので、多少は割り引いて読む必要があるのではないか、と思われる。なお、モンゴル帝国の各種遠征には必ずといってよいほど地図が付されているがあまり役に立つとは思えない。系図も詳しすぎてわかりにくい。本書に登場しない傍系は削った方がよかったのではないか、と思われる。